中を見れば、その伏線や情景描写はもちろんのこと、こちらが引き込まれざるをえないほどの描写力と細やかな心情に圧倒されるのだ。
題名はライトらしくなっているが、そこに騙されないでほしい。
たしかに要素はライトのものなのかもしれない。
「少年」「勇者」「無双」「俺TUEEE」のような。
だが、その軸を覆してしまうほどに、彼の煤け、にじられ、挙句には傷に塗る薬もろくにないまま剣を振るう姿には心を突き動かされる。
彼の負った傷は果てしなく深いものだ。
だが、そこに「愛」という薬を垂らした時――世界は急転する。
苦しくて、愛おしくて、哀しい、そんな「ただひとりの少年」に物語はフォーカスされる。
題にもあるように、たしかに彼は奴隷だ。
人々の期待に動かれて、おのれの定められた運命に従うだけの「奴隷」だ。
けれども注目してほしいのはそこではない。
彼が、ひとりの少年が。
「勇者」として生きざるを得なかった彼が歩んだ、哀しく昏い、でも最上級に切ない物語を、ぜひご覧いただきたい。
読んで損はない作品です。
人間界に攻め入る魔族を倒す、それが選ばれし勇者の役目。
桁外れの戦闘力と強靭な肉体を持ち、瞬く間に敵を一掃する。無敵の勇者クリストファーは、人々の尊敬と称賛を一身に集めていた。
けれど、そんな彼の抱える悲哀を、葛藤を、孤独を、絶望を知るものはいない。ただ一人、彼女を除いては───
勇者クリストファー、実は弱さを抱えるごく普通の人間です。深く苦悩しながら勇者としての振る舞いを続けているのも、その弱さ故でした。
ようやく勇者としての責務を全うした彼に、手酷い裏切りが待っています。そして容赦なしに次の闘いへと踏み出すことになるのです。
これが、辛い。そんな仕打ちがあるか! とキーボードを叩き壊したくなる衝動に駆られます。彼が「知っていたさ」とばかりに嘯く様子がまた悲しくて。
しかし、そんな彼に運命の出会いが。束の間のささやかな幸せを噛み締めます。心の底に葛藤を隠したまま………
そして、最後の戦いへ。
華麗な戦闘シーンは必見、特に最後の戦いは壮絶に美しい。
とても悲しく恐ろしい物語です。結末の残酷さに、たまらなくやるせない気持ちにさせられます。
多くの方に読んでほしい作品。号泣覚悟でどうぞ。