産まれたばかりの未来

 日々を生き延びてこその未来。後ろを向くには前がなくてはならない。方角を知っていなくてはならない。停滞。前も後ろもわかっているのに、足が重い。

 産まれたばかりの夢がバッドエンドを迎える。目が覚めた時には気分の悪さと、夢を思い出せない安堵感に包まれる。仕事の準備をする時間だ。

 街行く人々は取ってつけたような笑みを浮かべていて、自分もその一員として街をひた歩く。似たようなメイク服装髪型。その中で個性を出そうと必死になる女子高生。制服姿は憧れるものですら無くなっている。縁のないものくらいの認識。他人は私を冷たい人だと言った。

 不法投棄されたゴミ。酔っ払いの吐瀉物の据えた匂い。群がるカラスは飢えていて、朝昼夜と安定して食事をとる私には目も向けない。飢えている子供をみても、気づける大人が少ないように。

 高層マンションの屋上は封鎖されている。そんな噂が流れるこの街では、思春期の少年少女が引きこもっている割合が高い。社会人はノイローゼ気味で、隈を浮かべながらも会社へ向かう。満員電車に揺られたりしながら。

 心から余裕を奪うのは、何者なんだろう。人なのか物体なのか目にも見えないのか、わからないけれど。

 野良猫は建物に挟まれた少しの隙間に入り込んで、風を避けながら毛繕いをしている。今日は雨が降るのかな。猫が顔を洗ったからね。なんて、本当は信じてもいないから、少し、笑えた。

 視界に入るどの方向も前だ。私は歩みを進める。停滞しなければ、遠回りでも雨が降ろうとも、前へ進めるのよ。

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