君が望んだ空の色を、きっと。

 終末的世界の中で、本物の「空の色」を追い求めた少年・少女たちの物語。短編でありながら、人間の命の尊厳や、家族・友人関係が分かりやすく、しかし深く、表現されている。
 地球にオゾン層がなくなり、子供たちは外へ出ることを禁じられた。癌患者が増える中、一人の少女もまた、病院に入院することとなる。彼女は「本当の空」を見ることを夢見ていた。そして、主人公が父親と仲直りすることを望んでいた。退廃的な世界観であるが、登場人物たちの感情はみずみずしく、豊かである。この世界観と感情表現の対比が、切なさや優しさをより引き立てている。
 知識や説明に織りこまれる、少年・少女たちの仲間への想いが、短編とは信じられない濃さを持っていて、読んでいて驚いた。

 是非、是非、ご一読ください。

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