これからの活動

「これ今日の資料な。一年も無許可でキャラクターを使用していたそうだ。野放しになるなんて監視部の腕も落ちたもんだな」

 一階に降りるエレベーター内で門脇は桜田に資料を渡した。クリアファイルにはこれから削除するキャラクターの特徴がまとまった資料と、新しく作られたPRパンフレットが挟まれている。

 パンフレットの表紙には「デイリーちゃんとドリームくん」が描かれている。

 門脇は相変わらず、黒髪短髪に顎髭とサングラス、トレンチコート姿だ。

「そうですね、監視部からの削除要請が遅くなると、うちら、実行部が削除実行するときの顔が立たなくなりますよね。今更? って目で見られますよ」

 チンと鳴りエレベーターは一階についた。

 エレベーターを出て、石張りの床を革靴でコツコツと鳴らしながら、トレンチコートのポケットに両手を入れエントランスに向かう門脇の姿は、アクション映画のワンシーンのようだ。

 拳銃でも出すかのように右手を左胸の内ポケットに入れる。取り出したのはタバコだ。

 タバコをくわえ、ガラス張りのエントランスの自動ドアから出ようとした時、七、八人の男に取り囲まれた。

「な、なんだ」門脇と桜田は思わず立ち止まる。

 人数を数えると八人いる。全員が同じ格好――ダークスーツに、ブラックネクタイ、そしてサングラスという、門脇にも負けないような異様な格好だ――をしていて、七人が白人、一人が東洋人、おそらく日本人である。

 一人の男が桜田の持っているパンフレットに目を向けると英語で何か話し始めた。それを日本人の男が通訳をした。

「あなた方はキャラクター監視管理協会の方でしょうか?」

「あぁ、そうだが。」門脇は端的に答える。

 日本人の男が他の白人に英語で通訳をする。すると白人の男がさっきよりも長く英語で話し、日本人の男がまた話し出す。

「あなた方が所有するキャラクター『デイリー』と『ドリーム』は、無許可キャラクターのため、これをもってデリートします。また、あなた方の活動内容自体、私どもと酷似するため、このデリートをもってあなた方は私どもの傘下となります。キャラクターに関する資料は我々が押収します」

 日本語訳が終わると、男は英語で何か指示をした。すると残りの六人の男が桜田たちをよけてエレベーターに向かっていった。

「おい、なんなんだ、あんたら」

 門脇は苛立ちながら訊いた。

「申し遅れました。我々は『国際キャラクター監視管理協会』と申します。本日よりここは我々協会のジャパン支部として活動していただきます」

 そう言うと日本人が鞄からパンフレットを出して門脇と桜田に渡した。

「こちら当協会の活動内容をまとめたパンフレットになります。よろしければご一読ください」

 男が渡してきたパンフレットを見ると、そこには目の前にいる男と全く同じ姿をした国際キャラクター監視管理協会の公式キャラクターが写っていた。

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キャラクター監視管理協会 雹月あさみ @ytsugawa

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