なつ色のふみ

佑佳

番外編 CLOWN with ARTIST

 全世界の皆さま、こんにちは。ご機嫌いかがかな。

 ご存知のとおり、僕は世界的有名パフォーマーのYOSSY the CLOWNです。


 この度この場を設けましたのは他でもない。

 僕の大切な友人の一人である日本人芸術家アーティストにまつわるお知らせを持ってきたんだ。そして彼のこともきちんと紹介しようと思ってね。

 今回のために、佑佳にどうにかこの場を用意させたんだよ。あの人もやろうと思えばまあまあ無理ができるようになったからね。


 いやぁ、タフになったもんさ。だって一五年前なんて目も当てられないほどグッズグズだったんだよ、フフッ! 聞きたい? じゃあn──えっ? 『その話は今するな』? じゃあいつするの?

 uh-huh……『しなくていいから先へ進め』、ねぇ。ハイハイ。

 やれやれだ。




 まぁ茶番はこれくらいにして。

 ご紹介しましょう、signoreシニョーレ後藤ごとう秀介しゅうすけ


後藤「こんにちは、YOSSYさん。お久しぶりです。改めましてよろしくお願いします」


 こちらこそ、signore。相変わらず丁寧だね。

 じゃあ簡単に僕から紹介をしよう。ここからは対談形式だよー。




YOSSY「僕と彼の仲は、とある冬に始まったんだ。熱心なアーティストマネジメントのsignorina女性が彼との共演を持ちかけてきてね。秀介はベルギーを拠点に活動している新進気鋭の日本人アーティストだ。僕と年齢も近いってのもあって、直感的にお受けしたのが始まりだよ」


後藤「YOSSYさんのお名前はヨーロッパで有名でしたから、初めにこの話を聞いたときは『まさか』と思いましたね。日本に拠点を移されたとネットニュースに上がってましたし、まさかベルギーまでわざわざお越しいただけるとは思ってもみませんでした」


YOSSY「はは、ヨーロッパは馴れた土地ですからね。その後、諸々を取り決めるために電話会談から始まって、最終的に家族ぐるみで付き合うようになるまでに時間はかからなかったよね。秀介の感覚は、僕と本当によく合う部分がある」


後藤「世界のYOSSYにそう評されるのは嬉しい限りですよ」


YOSSY「そう? 秀介の色使いがとても好きだからね、僕」


後藤「はは、光栄すぎます」


YOSSY「さて、この場にsignore秀介をお呼びしたのは他でもない。2019年8月、なんと秀介の物語が書籍になりましたっ」


佑佳「イエーーーッイ!!!」


YOSSY「ちょっとちょっと。カメラまわしてる人が叫ばないでください、音声だけが邪魔になるだろ?」


後藤「まぁまぁ、YOSSYさん(笑)今回のこれは私たちの若いときの話ですが、私はとても大切にしてる物語なんです。佑佳氏に発掘してもらわなければ、今こんな風にはなってませんよ」


佑佳「ご、後藤きゅん……」


YOSSY「んんっ、んんんっ! 一五年前の恥ずかしい話んんんっ!」


佑佳「さっ! 対談を続けてっ、どーぞっ」


YOSSY「失礼、signore。僕のビジネスパートナーが無礼を」


後藤「いやいや(笑)」


YOSSY「話を戻そう。今回書籍になったのは【なつ色のふみ】という純恋愛小説だね。佑佳は2010年の春先に一旦同じくらいの量で書ききっていたよ」


後藤「あの時の私はもっと幼さがあったり、話自体も少し方向性が違いました」


YOSSY「彼女……signorina香織かおりは姓が未設定だったよね」


後藤「そうそう。ただ、今回リライトに当たって新たな『ネタ』を組み込む際にどうしても姓が必要になりました。佑佳氏は彼女の姓名フルネームを考案し直すのに、名前自体を変えてしまうことを考えてましたよ。相談されました」


YOSSY「そうでしたか。まぁ当時からぼんやりと考えていたネタだったようですが、使用する機会を逃した印象でしたね」


後藤「燻っていたネタだったわけですか」


YOSSY「ええ。しっかし、こう言っちゃなんだけど、彼女の名前は2010年当時本当に突発的に思い付いたものだったってのが、どうもなぁ」


後藤「土曜の午前中に、DVDを取り出そうとして再生を止めたときにたまたまやっていた番組に出ていた『香織』さんから取った……なんてね、ハハ」


YOSSY「ほんとに失礼極まりないな……」


佑佳「…………」


後藤「まぁまぁ(笑)で、そのDVDの中身ってのが、私の名前の元になっている彼らの番組でしたけどね」


YOSSY「当時彼らは爆発的な人気だったね。あの頃があって今も名前が廃れていないわけだけど」


後藤「私は彼らのぶっ飛んだネタ、『とても変わってる』ので大好きですけどね」


YOSSY「……芸の道をいく者としては、秀介にそう言われると、ジャンルが違うとはいえ嫉妬心が芽生える。羨ましい」


後藤「すみません(笑)私はそういう貪欲なYOSSYさんだから、突き動かされたところもありますよ」


YOSSY「しゅ、秀介……」


佑佳「ヨシー、キュンとしないでー」


YOSSY「カメラまわしてるんだから発言控えてくださーい」


後藤「ふははっ! ほんとに仲良いですよね、お二人」


YOSSY「いえ。単に付き合いが長いですから兄弟みたいなもんです」


佑佳「ワタシが歳上な!」


YOSSY「あの戯言は無視します。えーではsignore。今回の書籍に対する注目点やこだわりがあればよろしくお願いします」


後藤「はい。まず注目点のひとつは、ウェブ版を読了済の方でも新鮮さを味わえる『手紙の内容』についてです。プロの編集さんに『もっとフランクでいい』と背を押されまして、手紙がもっと話し言葉的で書き直されました」


YOSSY「気を抜くと佑佳はすぐ堅い文面になるからなぁ」


後藤「二つ目は『加筆場面、加筆描写』です。五感を大事にしていた私に添うような『五感を鮮明に刺激する描写』を、佑佳氏はそりゃもうかなり書き加えていました」


YOSSY「リアルな話、大型連休前のまだ肌寒い公園とかで、風の匂いにあたりながら執筆していたからね。寒い季節に真夏を考えるのは、夏が苦手な佑佳としては久々に苦労しているように見えたよ」


後藤「私が夏の暑さとかが何の苦でもないので、『その描写はネガティブじゃない?』とつい口出ししたのを覚えてます」


YOSSY「ご尽力感謝します……」


後藤「ハハ、迷惑になってなかったなら何よりですが」


YOSSY「では、こだわりはどこでしょう?」


後藤「もちろん表紙ですね」


YOSSY「うんうん、同意だね。佑佳は表紙をどうしても杉村氏に描いてもらいたくてね。先方から了承の返事がきたときは、ケーキを買って一人で先にお祝いしてたよ」


後藤「ハハハっ! わかりますけどね! 私も描いていただけてすごく嬉しかったですよ」


YOSSY「羨ましい限りだ。杉村氏は、素敵な魔法を表紙に組み込んでくれたよね」


後藤「ええ! 私はどうして思い付かなかったんだろうと羨望するくらいの高度な技術でした。いやー、本編でもそうするべきだったかもしれない」


YOSSY「『感じ取る』という美しい表現の魔法だと僕は思うよ、秀介。杉村氏の魔法に気が付いた希有な方が、作中の色に気が付けば恐らく表紙を見る。そうすると、ゾワゾワくると思わない?」


後藤「私の発言の力が弱かったような気がするし、少しでも多くの方に気が付いてもらえるといいんですけど……。なんだかYOSSYさんが好んで行う『敢えて語らない』手法に似てますね」


YOSSY「僕は話が長くなりすぎるのは無粋かなと思うだけで(笑)」


後藤「(笑)」


YOSSY「あと僕からひとつ言わせれば、表紙の手触りを覚えておいてほしいと思ったよ」


後藤「あ、お手に取っていただけたんですね」


YOSSY「もちろんさ。作中最後で表紙の意味に気が付いたら、きっとみんな『最後の手紙を受け取った』気持ちになれるはずだと僕は思う」


後藤「共感していただけるのなら、とても嬉しいですね」


YOSSY「今回の【なつ色のふみ】は、佑佳の言葉遊びと色のこだわりがぎゅうぎゅうに詰められた一作だよ」


後藤「是非多くの方にお手に取っていただけると、私も佑佳氏も嬉しく思います」


YOSSY「世界で活躍する秀介が、書籍でどこまで行けるのか。僕も佑佳の右隣でしっかり見守らせてもらうからね」


後藤「光栄です。佑佳氏の描くなつ色の景色を是非とも堪能いただきたいです」


YOSSY「では、秀介。今回は本当におめでとう! そして対談ありがとうございました」


後藤「いえいえこちらこそ! 祝辞を頂戴できて嬉しかったです。ありがとうございました」

 

YOSSY「また改めてご飯行こう、そしてまた共演しよう」


後藤「はい、喜んで」


佑佳「【なつ色のふみ】全国書店はじめネットショッピングでご購入いただけまーす! 直筆サイン入り書籍はBOOTHからお求めくださーい!」


YOSSY「はしたないほどのダイレクトさだな……」




 多大なる感謝の気持ちと愛を込めて──


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