一人の女優である主人公が、キミカを探すために舞台監督から一か月の休暇を貰う。指定されたアパルトマンで、暮らし始めた主人公の周りには、才能あふれる人々が集まっていた。絵描きのかける。ギター弾きのオーナー。そして、主人公はスーパーの店員の男性に惹かれていく。女優の生活を続けていたら、きっと目に留まらなかった世界。
そこで主人公が見つけたものとは――?
そして、主人公は無事にキミカを舞台に連れてくることができるのか?
私たちはまだ、夢を見ることを許されている。それがどれだけ尊く、恵まれていることなのかが、身にしみてわかる一作。そして何より、夢を向いて歩くことの大切さが詰まっている。夢を追う人に、是非読んでほしいと思った。
大丈夫、一人の時間が芸術家にとって必要なものでも、私たちは繋がっている。何故なら、「吹く風は同じ」なのだから。
カクヨムのカク人必読の作品。
是非、ご一読ください。
読み終えたとき、骨のあるアーティスティックなインディーズ映画を一本見終えたような気分になりました。舞台は現代日本なのでしょうが、読者はどこか知らない場所に連れて行かれたかのような独特な空気感を味わいます。それはタイトルや丘の上のアパルトマンという舞台設定以上に、さり気ないようで実はおそらく考え抜かれている人物造形とストーリー構成によるものでしょう。
変わり者たちの偶然の遭遇にしか見えなかった、期間限定の緩い関係性。しかし、最後にはそれが何か大いなる力によって引き合わされた結果に思えてきます。何気ない一言やちょっとしたアイテムの全てが見事に一本の糸のようにつながっていく様、そして各人の日常がその先に見えてくるようなエンディングは見事と言うほかありません。
苦悩と内省。出会いと気付き。選択肢と迷い。「バカンス」という名の彼らの一ヶ月を目撃した私たちもまた、新たな一歩へといつの間にか背中を押されています。何者かになりたいあなたや、何かを生み出したい君に、きっと響く物語。