Data.ex : それは浜辺にて


 これは、始まりの記録。


 ※ ※ ※


 2X61 ??? ???


 ざあざあと、心地よい潮騒しおさいの音が耳に響き、目の前にはどこまでも海の蒼と空の青が続いています。


 砂を踏む足の裏の感触と、波に足が引っ張られていく感覚がとても面白い。


 私は、海風になびく髪を押さえながら、浜辺を歩いていました。


 ここまで来るのに随分とかかったような、ほんの少しの時間だったような、不思議な気分です。


 歩くうちに、ひとり佇んでいる人の前までやってきました。


 その人はじっと海を、いえ、海の向こう側を見つめていました。


 ただ静かに、涙を流しながら。


 私はその人のすぐ横で立ち止まり、一度大きく深呼吸をすると、声をかけました。


「こんにちは」


「うわっ、わっ。キミ、だれ?」


 彼は私がいたことに気づかなかったようで、驚いた様子で涙を拭きながら、たずねてきます。


 その問いに、私はずっと昔に彼が言っていたことを思い出しました。


 −−−−ヒーローっていうのは、安心を与える存在なんだよ。


 だから、私は名乗ります。


「私の名前はメル・アイヴィー。あなたと歌を歌うため、ずっと遠くからやってきました」


 だから、私はたずねます。


「あなたの名前は、なんですか?」



 fin.

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「メル、愛してる」 にのまえ あきら @allforone012

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