学校に行けなくなった芽衣。
彼女は隠れるように日々を消化していた。
ある日、大雨に出くわして……雨宿りをさせてもらったのは――
水曜日だけ営業しているパン屋さん。
そこで出会うのは、温かい人々。
店長のさくらさんを始め、お客様もニコニコと笑顔。
そんな、穏やかなお店でした。
芽衣はパン屋さんでの出逢いを通して、少しずつ少しずつ、前を向いて歩いて行こうとするのです。
時には転びそうになることも、嫌なことを思い出すこともあるけれど。芽衣の傍には、もう大切な人たちがいます。
ここにあるのは、温かくておいしいパン。そして、傷を負いながらも毎日を懸命に歩む優しくて強い人たち。
きっとあなたも、おいしいパンを食べたくなる。そんなお話。
些細なことから不登校になってしまった中学三年生の主人公、芽衣。
雨の日に、マスクをして傘をさし、その身を隠すようにしながら図書館に通うのが、彼女にとって唯一の、外の世界との繋がりだった。
図書館からの帰りがけ、好奇の目を避けるため、偶然逃げ込んだその場所に、水曜日だけ営業しているパン屋さんがあった。
そこで、一人でパンを焼く、さくらという女性。そして、その息子で高校生の音羽と出逢う。
暖かく優しく迎え入れてくれるさくらと、不器用な優しさで接してくれる音羽。そして、そこを訪れるお客さんたち。なんだか、みんながあたたかい……。
そんな人たちと触れ合い、悩み、励まされながらも、主人公の芽衣は、少しずつ前を向いて、自分の意思で歩み始めるのです。
それが、ほんの小さな一歩だとしても、そして、苦しみながらもがんばる彼女を、あなたもきっと応援したくなるはずです……。
優しさが溢れる、とても素敵な物語。皆さまのこころにも、きっと響くと思います。
傷ついたり疲れた時に帰りたくなるような、心が落ち着けるような。
そんな場所があなたにはありますか?
水曜日にだけ開いている坂の上のさくらさんのパン屋さんはたくさんの人にとってまさにそんな場所なのです。
いじめがもとで学校に行けなくなった芽衣ちゃんが、雨やどりで偶然に出会ったのは、そんなパン屋さんのさくらさんと音羽くんでした。
これは心がかじかんで動けなくなっていた芽衣ちゃんが、毎日生きていくことを大切に思えるようになるまでの、優しい出会いの物語です。
寒い冬の日に、甘く暖かい飲み物にホッと心が安らぐように、優しさが心に沁みる物語。こんなパン屋さんが近くにあったなら、私も毎週水曜日は通って、食べるだけで元気が出そうなおいしいパンを買っていることでしょう。
おすすめです♪
誰だって、人生がまっすぐな訳じゃない。山も谷もあって、時にはレールから外れてしまうことがあってもいいと思う。でも、戻れるかの自信がなくて…怖くて……。
毎日は何もない1日ではなく、ちゃんと一歩ずつ、気づいていないけれど進んでいるのにね。
週に一度、大好きになったパン屋さんに行きたいと思う、これってとても大きな進歩だし、方向転換だということに気づかされます。
こころが悲鳴をあげたとき、一度それまで当たり前だと思っていた日常から切り離して立ち止まること。そこで周りを見回したとき、これまで見えていなかったところに、自分を手招きしてくれている誰かがいることに初めて気づきます。立ち止まることは決してカッコ悪くない。無理に合わせて流されるより立ち止まることの方が勇気が必要だってこと。そして新しい目標を持ったあなたは立ち止まる前の何倍も強くなっているのだから…。
現代の画一的な社会に疲れてしまった貴方に読んでもらいたい、とても暖かくて優しいお話です。
何となく目に付き、ちょっと読んでみようかなっと思っただけだったのに、気がつけばどんどん読み進み、頭の中にこの物語の世界を想像するのが楽しくなりました。最後の方になって行くと、次の話が続いているのを見て、あ、まだ話続きがあって良かったーと思うほど(笑)楽しく読ませて貰いました。この作品に出会えたことがとても嬉しいです。
高校生の身分で偉そうには言えないのですが、本屋に行っても数え切れない量の小説がありそれを見るたびに、小説家という職業は、厳しい仕事なんだなと感じます。しかし、この小説のような素敵な作品は、誰しもが書けるわけではないと思います。その持って生まれた才能と努力で磨いた小説を書く能力を更に伸ばして、素敵な小説を沢山生み出していくのを、楽しみにしています。
本当に素敵な作品を読ませて頂き、ありがとうございます。
「学校」の外にも世界があるということに、気付いていない少年少女は案外多い。
教室の中に居場所がないのなら、他のところでそれを見つけられたらいい。
この物語を拝読して、沁み入るようにそう感じました。
不登校の主人公・芽衣が見つけたのは、水曜日だけ営業しているパン屋さん。
その小さなお店で出会った人々との穏やかな時間が、傷を負った芽衣の心を少しずつ解していきます。
優しい語り口の文章によって丁寧に紡がれる、芽衣の微かな心情の機微。
甘いパンの匂いや繋いだ手の温もりまで伝わってくるようで、胸の奥がきゅっとして何故だか涙が出そうになります。
全体を通して、雨の描写が印象的です。傘で身を隠す冷たい雨だったり、素直に流せない涙の代わりの雨だったり。
でも、決して消えない傷痕を癒すための雨もあるように感じました。
同じような傷を負った音羽くんが芽衣にしてくれたように、芽衣もまた他の誰かに温かな時間をあげられるようになったらいい。
自然に優しい気持ちが溢れてくるような物語。この先も楽しみです。