空が落ち、崩壊に向かう世界。棺を背負う少女ナージェと棺に眠る異形のイェンが、世界を元に戻すために旅を奇妙な街を旅して回る、SF風味もある壮大な作品です。
イェンの視点で綴られますが、時に暴走気味になる彼のナージェへの愛情表現は、
ダークトーンな物語の清涼剤となっています。
それぞれの街に住む人々の暮らし、彼らの過去を知る中で、崩壊に向かう世界やナージェそのものの秘密も少しずつ明らかにされていくストーリーに、ついつい次話へ次話へと手が動いてしまいます。とても巧みな構成。
作者様の既存作とのクロスオーバーもお見事。知っている人は「うおおお! ここでそれが出てくるのか!」となり、とはいえ知らない方でもすんなり読める、そのサジ加減が絶妙ですね。
最後の最後まで結末の読めない重厚なファンタジー、ぜひご一読ください!
世界に空を取り戻すため、ばらばらになった『街』を旅して巡る、歳を取らない永遠の少女ナージェ。
彼女が背負う棺に封じられた異形の怪物イェンが、物語の語り部です。
この作品を読み始めて真っ先に惹かれるのが、その世界観でしょう。
夢の中のような理想郷の形を取りながら、その実どこかに闇を孕んだ『街』。
蠱惑的で、歪で、それゆえ不気味。
見せかけの平和の裏側で、本当は何が起こっているのか。
禁じられた扉の隙間からそっと向こうを覗くような甘美な感覚が、たまらなく癖になります。
そして、イェンがとにかく魅力的です。
ナージェに対して粘性の拗れた愛を捧げる一方で、彼が真に求めているのは彼女の『絶望』。
このように歪んだ愛憎を抱きながらも、基本的には冷静かつ常識的で、無茶しがちなナージェを窘めたりサポートしたりします。
ナージェの力なしでは棺の外にも出られないイェンですが、ナージェの知らない重大な事実を握り込んでいるようです。
まるで、互いを縛り合っているかのような関係。
そこに隠された秘密が紐解かれる時、きっと世界の真実が明らかになる。
物語がこの先どこへ向かっていくのか、とても楽しみです。
空が落ち、砕けた大地を舞台に時を止めた少女・ナージェと黒き棺に囚われた異形・イェンが旅をする壮大なダークファンタジー。
イェン視点で語られる柔らかで歪んだ世界は重く澱んだ空気に満ちてはいますが、気付けば飲み込まれ、薄闇に目を凝らし手探りで進む二人と一体となって先へ先へと読み進めてしまいました。
謎が解けたかと思えば、また謎が。
一つの旅の終わりは、また次の旅の始まりに。
この連鎖の行き着く先には何が待ち受けているのか?
元来の空の如き収束か、はたまた現在の大地の如き四散か、それとも?
謎多き世界に取り込まれて逃れられなくなる作品です。
イェンくんの活躍、楽しみにしてます!!