テーマに最初から最後まで忠実な、芯の通った一作

世界観こそちょっと先に辿り着きそうな未来でありながら、その生活感は現代に通じるものがあるものでした。
地下都市という清潔さの保たれた空間において、多少価値観の変動はあれど、やはり人の認識はなかなか変わらないもの……。

そういった生々しい人間模様はありつつ、随所に救いが用意されていて、葛藤や山などを乗り越える上でも節々でホッとできて読みやすかったです。
特に実家でのやりとりのラストはスカッとできました。主人公にとって一番頼りになって欲しい存在が本当に寄り添える間柄なのが素晴らしい……。

たくさんの山場を越えた先のラストを読んだ時は、図らずも近所でその成長を見守ってきたおじさんのような心境になりました(笑)。
例え未来がどれだけ進歩しても、人の認識がそれに比例するかは別問題。でもきっとどこかで助けてくれる何かが居る。
厳しさの先にある読後感までしっかり考えられた、うまく言葉にできませんが、無知にも説得力のあるSFだという言葉が頭に浮かびました。

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