本作に登場するカメレオンのカメオはとにかく変わった生き物である。見た目こそカメレオンだし、体色の変更もできるのだが、このカメオ、身の回りの物ではなく、好きな物の色に無意識に体の色を変えてしまう。
青空をみれば体は空の色に、桜の季節にはピンク色に、水まんじゅうを食べれば白と餡子のまだら模様に。変なのは体の色ばかりではなく、人間の言葉も理解しているようだし、水まんじゅうを食べるというところからもわかるように、普通のカメレオンが食べない物も好んで食べる。特に和菓子が大好き。
この風変りなペットのカメオと家族が過ごす日常をメインに描いた本作。
ときどき、外に出たカメオが小学生に狙われたり、食べ物に混ざって冷凍庫に入れられたりすることはあれど、特に大きな事件が起きる訳ではない。基本はほのぼのとした日常がメインなのだが、日常の中で食べ物や生活の変化に様々な反応を見せるカメオがいちいち可愛らしくて、これがなかなか読ませるのである。
分量も多くないので、その気になればすぐ読み終えられるのだが、できれば少しずつじっくり読んで、楽しんでほしい作品だ。
(「さまざまなペット」4選/文=柿崎 憲)