記憶の押し花

 もう四十年近く前になりましょうか。祖母が他界し、父の転勤に伴い家族と切り離された祖父は糖尿が悪化し、それと同時に認知症が進行しました。祖父母に可愛がられていた私は、祖父の記憶に私が残らなくなってしまったのを知りひどく衝撃を受けました。左様な次第で本作の主人公の気持ちは実によく分かります。それが必ずしも綺麗事だけではすまないことも。ご家族がこの厳しい試練を無事切り抜けられますよう祈ってやみません。