描かれた風景から、彼らの心が響いてくる
- ★★★ Excellent!!!
勝戦国の王太子アッシュと、亡国の王女フェン。
決して相容れないふたりですが、フェンが報奨金に目がくらんだことによって、とある事件を共に解決することになります。
ぶつかり合い、認めあっていくふたり――。
けれど、彼らは敵対する者同士のはずで……。
ふたりの恋愛が魅力的であることは勿論ですが、「事件」に関して張り巡らされた伏線が実に素晴らしいです。
あ、あそこで出てきた少女の背景はこういうことだったのか。あの村での出来事は、こう繋がっていたのか。――などと、謎が解けていくさまは、とても興奮します。
そして、この素晴らしい物語をそっと密やかに、けれど美しく彩っているのが、彼らの後ろに広がる風景です。
フェンが悲しいときには、空も泣きます。
身を切るような雪も吹き付けます。
淋しげに置かれた遊技盤が、無言で語ってきます。
何ひとつ無駄なことなく、すべての言葉が、この物語世界を息づかせています。
しっかりと組み上げられた世界で繰り広げられる、切ないラブストーリー。
現在、クライマックスです。
この先どうなるのか。手に汗握る展開です!