タイトルが気になったら、ぜひお読みください!

『世界で一番あなたがきらい』そのタイトルに、恐らく興味を引かれる方は多いはず。

舞台は火の国。
主人公は宮廷の婦女子のあこがれの的の麗しの銀の騎士。
乙女のあこがれの騎士でありながらも、あまり自覚もなく天然で真っすぐな気性のフェンは、滅ぼされた水の国の生き残りとして、意図をもって火の国の第二王太子アッシュに従うことを決めます。

フェンは、強い騎士のはずなのに、性根のやさしさと背後に渦巻く陰謀にどこか縁遠いせいか、ハラハラさせられます。
何よりも序盤から、『嫌い』になるまでの彼との関係が荒々しく心配になるほど。
けれど、その『嫌い』な彼から向けられる不器用な優しさに、今度は読者として、もどかしくもどこかほっとさせられます。

フェンの隠された過去と痛み、王子の過去と痛み、周囲の人の正義と勝手な思い。フェンにのしかかる重圧を心配しながらも、登場人物すべてにドラマがあるため、それらの正義に思いを馳せながら、結末はどうくるのか、ドキドキし通しです。

随所随所にちりばめられた、過去の種明かしにどんでん返しの展開、あっと思わされて、やられた!と思うこともしばし。

それでも根底にあるのは、美しい望郷の風景。帰れない場所、でも心のどこかにある懐かしい風景。そんなのを思い浮かべながら、穏やかな読了感に浸れるお話です。
フェンとアッシュが二人手を取って、故郷の地を訪ねる風景を思い浮かべながら……。

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