泣いて迷って傷ついて、それでも君は進むんだろう。道の先に、光を信じて。

タイトルでまず惹かれたのですが、序章の引力半端なくて、心を鷲づかみにされました。
私はとかく、心理が丁寧に描かれている物語が好きなのですが、主人公であり語り手でもある僧侶リオの心情描写が深く丁寧で、共感中枢をぐらぐらと揺さぶられます。

勇者とともに魔王を倒したリオはその最後の戦いで命を落としてしまう。
命と引き換えに世界を救った––––なんて清々しいものではなく、深い未練と後悔を抱いたまま意識を手放したリオは、なぜか次に目を覚ました時、失われたはずの故郷の村に戻っていた。……というはじまりです。

タグやあらすじにある通りの、死に戻り、やり直し、の物語なのですが、ストーリー自体は勇者と僧侶が神託を受けて魔王退治に旅立つというシンプルな王道モノ。
ですがその道行きを、リオはやり直し前の記憶を持ったまま一つ一つ選んでいかなければいけない。

ひとつ間違えたら『間違った未来』に突っ込んでしまうかもしれない、その重責と葛藤が読み手に伝わってきます。
やり直し前と後、救えなかった人と救えた人、という結末の対比も実に鮮やか。
そして、やり直すことで救えた人に今度はリオが、救われてゆく。
物語が進むにつれて、何を間違ったのかも、少しずつ明らかになってゆきます。

目指すものは途方もなく、リオが背負うのは誰にも肩代わりできない重責ですが、それでも道中のやり取りは温かく、コミカルです。
割と鈍いリオがほんのり逆ハ状態になってるのもまた、微笑ましい。
タイトル通りに、優しさを分けてもらえる物語です。
 
王道ストーリーがお好きな方はぜひご一読を。そして一緒にリオを応援しましょう。

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