第一部最終話 同盟機関紙「リベリオン」より抜粋



同盟軍第11師団・第1連隊、通称「アスラ部隊」が同盟軍最強の部隊である事は誰もが知る事実である。東雲中将が指揮する第2師団に組み込まれていた頃から、数々の戦果を上げ、無敵無敗を誇ってきた。


最強部隊の誉れ高きアスラ部隊、その部隊長達は一騎当千の勇者、豪傑、猛者、達人、それに曲者まで揃っている。そんな部隊長達の中でも一際輝く強者が三人いる。



一人目はアスラ部隊総司令、御堂イスカ准将。言わずとしれたアスラ部隊の司令官だ。同盟設立の立役者、アスラ元帥を父に持ち、志半ばで倒れた父の遺志を果たす為に戦う英雄。同盟最強の将官である彼女を、アスラ元帥の異名であった「軍神」の名で呼ぶ兵士達も多いと聞く。筆者も彼女のこれまでの活躍は軍神の名に相応しいと感じ、その功績の多大さに驚嘆を禁じ得ない。


亡き父への想いを胸に戦う御堂准将を「軍神」と称える事は至極、自然な事だ。広報部としても今後は御堂イスカ准将の異名は「軍神」で統一する事となった。


その軍神は力と速さと技を兼ね備えた完璧な兵士であり、全ての兵士は軍神イスカを規範とするべきである。彼女こそが兵士の理想像、あらゆる兵士が到達を目指すべき、兵士の頂点なのだ。同盟軍の全兵士は、軍神の戦い振りをその目に焼き付けるべきなのである。



二人目は同盟のエース、「緋眼」こと火隠マリカ大尉だ。緋眼のマリカは軍神の盟友にして世界最速の軍人。


軍神イスカと双璧を為す彼女を超える忍者は過去には存在せず、未来にも誕生しえないであろう事を筆者は確信している。同盟結成の原動力となった御堂アスラと火隠段蔵の友情、英雄二人の娘である御堂准将と火隠大尉の絆も偉大な父達に勝るとも劣らない。軍神ウォー・ゴッド忍者の頂点マスターニンジャと謳われた名コンビの後を継ぐのは、二代目軍神と緋眼ルビーアイ、彼女らがいる限り同盟に敗北はありえない。軍神のオーダーを完璧に遂行する緋眼のマリカはアスラコマンドのエース、そして同盟の、いや、世界のエースなのだ。父をも超える最強の忍者として名を馳せる彼女にこれ以上、頁を咲く必要はないはずである。



三人目の男は上述した二人と違い、「英雄」と呼ぶにはいささか差し障りがある。弱い訳ではない。むしろ凄味では上述の二人さえも超えているのかもしれない。なんと言っても彼は、同盟軍最多殺傷記録の保持者なのだ。一度に殺した数、これまでに殺した数、生死不明に追い込んだ敵兵の数、どれも同盟最多で殺傷記録の三冠王。その男とは、言わずと知れた隻腕の殺し屋、「人斬り」大蛇ト膳大尉だ。


人斬りト膳は、決して同盟将兵の模範となる兵士ではない。多大な戦果を上げるが、数々の問題行動も起こしている。彼の所業に眉をひそめる者もいるが、彼を不要だと言う者はいない。筆者も彼の全てを肯定は出来ないが、彼の強さと胆力だけは、本物の中の本物であると認めざるを得ないのだ。


同盟兵士諸君、10倍の敵に包囲されても怯まず臆さず、獲物が増えたと舌舐めずりする人斬りト膳の胆力、そして数の差などものともせずに敵兵を斬り伏せてゆく彼の強さは見習おうではないか。




上記に名を記した三人が三強として君臨してきたアスラ部隊であったが、最近になって、変化の兆しが見える。三強に迫る者が現れたのだ。


恐るべき追跡者の名は天掛カナタ特務少尉。「剣狼」と呼ばれる期待の新星である。


彼の活躍は同盟兵士諸兄の耳目に入っている事だとは思うので、この記事では簡単に触れておくに留める。剣狼カナタは、約一年前に才能を見出されてアスラ部隊に入隊。数々の困難な任務を遂行し、力と名を上げてきた。照京動乱の際、僅かな部下を率いて、ミコト姫の救出に成功した手並みを見ても、彼の実力が伺い知れようというものである。それもそのはず、剣狼カナタは照京きっての名門である八熾一族、その宗家の血を引く男なのだ。八熾家は武芸に秀でた照京の御三家、だが彼の強さは武門の血だけが支えている訳ではない。どんな逆境に置かれようとも諦めない不屈の魂と、現状に満足せず、さらなる高みを目指す意志の力が、彼をここまでの兵士に育てたのだ。


筆者は剣狼カナタとは個人的に親しい間柄ではあるが、この記事が贔屓の引き倒しでない事は、剣狼に会えば分かるはずである。その瞳の輝きを実際に見れば、彼が無限の可能性を秘めた兵士である事が、誰の目にも分かるのだ。その輝きは敵兵にとっては死への旋律であり、我々にとっては希望の光だ。


最後に筆者は予言する。そう遠くない未来、アスラ部隊三強の時代は終わり、アスラ部隊四天王の時代が到来するであろう、と。


正義を重んじる同盟兵士達よ、刮目せよ。アスラ部隊四天王の活躍に……


                    同盟軍広報部少尉 ドリノ・チッチ


※作者より 「クローン兵士の日常」はこの記事を以て完結とします。超一流の兵士、指揮官として成長したカナタの物語は続編である「クローン兵士の戦争」で描きます。続編でカナタは最強兵士に成長し、戦乱の星の命運を左右する男になっていきます。お楽しみに。


「クローン兵士の戦争」は、既に連載を開始しています。500話にも及ぶ長い話の読了、ありがとうございました!


    

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クローン兵士の日常 異世界に転生したら危険と美女がいっぱいでした 仮名絵 螢蝶 @kanaekeicyo

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