捉え方は人それぞれであろう。
それは重々承知である。
それでも、この作品を読んだ人は、何かしら思う所があったはずである。
やり場のない怒りと悲しみに、胸が一杯になる時もある。戦闘場面に血肉が沸き上がるような興奮を感じる時もある。主人公の遠大な視野に戦慄を覚える時すらある。
私だけであろうか?この作品を読む前と読んだ後では、自分の見る世界の景色が、少し変わったように感じるのは。
まだ読んでいない人は最初の10話でいい。騙されたと思って読んで欲しい。きっと、10話を読み終える時には、貴方も主人公のカルマに引きずり込まれているだろう。
作者様と20歳になる前にこの素晴らしき小説に出会えたことに感謝。
この作品は奴隷という最下層からてっぺんへと成り上がる話です。まずいいたいのは評価値をあまり信じないで下さい。この作品は好きな人はとことん好きになりますが、あまり好きになれない人もいるであろう作品です。なのであまりなろうの時も評価値が高くありませんでした。けれど、まず読んでみてほしいです。
私はなろうでストーリー全体を読みましたが、次が気になってしょうがなく、寝るのが嫌になり夜もずっと読みふけった記憶があります。
主人公が魅力的でなんというかキャラクターの魂がすごく伝わってきました。一心不乱に上へ上へと駆け上がっていく主人公の姿に「ウイリアムー」と叫んでしまいたくなるほどです。
それほどまでにキャラから熱量を感じられる作品です。
戦乱の世で、主人公は世界の底辺から、絶望の中から這い上がり、奪い、鍛え、戦い、昇り詰めて行く。
戦場で、市場で、王宮で、そして世界の端で、英雄と呼ばれる綺羅星たちと繰り広げる戦い。
それはまさに英雄譚。
心躍る戦いの物語。
しかし、それだけでは、この物語を語るには足りない。
英雄と呼ばれる綺羅星も、英雄達を取り巻く六等星も、人間なのだ。
表に裏に、どこかに弱さを持つ、人間なのだ。
虚飾を知略と鍛錬で実に変え、己の道を突き進みながらも、内に業の叫びを抱え続ける主人公。
戦場に似合わぬ己が弱さ、その弱さを知り、目を逸らさず、弱き者達と歩むうち、大きくなった弱将。
並ぶ者が無い英雄の原石ながらも、己が手から失う恐怖から逃れられず、小さな世界に留まる偉丈夫。
何度失い、何度砕けようと、その度弱さを乗り越え、全て抱えて突き進むため、最強を目指す狼。
頂に昇るほぼ全ての資質を持ち合わせながらも、決して頂に届かないその手を見つめられない英傑。
秘めた想いの長さと深さは比する者が無いながら、触れられる一歩を踏み出せない乙女。
眩い笑顔の奥で何よりも愛されたいと願い、誰よりも愛したいと飛び込んだ最愛。
弱さゆえに弱者の戦い方に長じ、一方で英雄に憧れ、豪傑に心惹かれ、その盾となった一兵卒。
物語を彩る人間達の弱さが、物語を辿る私達の、同じ人間として弱さを抱える私達の、心を打つのだろう。
瞬く数多の星々のうち、貴方の心を打つ星は、この物語のどこかに、きっと有る。
第1部は何も持っていない少年が、残された数少ない大切なものを奪われ、ありとあらゆるものを切り捨てながら進む復讐劇。
周りの人間を見境なく不幸にしていく中で、世界に与えた不幸に見合う何かを見出し、そのために全てを捨てて進んでいく。ただの復讐劇でも成り上がりものでもない。商業でも中々無いほどの作者の力量と熱意を感じる作品。
対照的に第2部はありとあらゆるものに恵まれた少年が主人公となる。
同じように喪失から始まるが、第1部に比べるとその程度で絶望するのかという肩透かしにも似た感情を覚え、主人公が坊ちゃん過ぎるように思えてしまう。
今後の展開次第であるが、第1部と第2部は間隔をあけて読むことを勧める。
あらゆる「今」を対価に、未来を作る。
「俺しかいないのだ!」
まさにそのとおりだと思う。
この世全ての悪すらも手段とする彼は、きっと他作品なら敵方として倒すべき存在になってるんじゃないだろうか。
でもきっと読者は全員そんなこと思ってない。
それはこの世界の誰よりも、優しい世界を現実にするために戦ってるから。
地獄に生きることを選び、他者は全て礎にし、その果てに目的を成しても彼自身の手には何も残らないことを知りつつ……
他作品の敵方ももしかしたら……そんなことまで考えちゃう。
何話を読んでも「面白い」が止まらない、そんな異常な作品。
脳内でシーン毎に映像が流れる様に読める不思議。
思わず感動してしまったので、何か証を残したくレビューをします。
いや、ホントコレ凄い。
心理描写がキャラ毎に物凄く深掘りされており、誰か一人でも深く共感を覚えるキャラがいれば堕ちる(笑
私はカールが好きだなぁ。
あとアポロニアも。
etc.etc.
みたいに、好きなキャラが増殖していき、気がつけばもう立派なファンになっていた。
そこに圧倒的な状況描写?が加わり、脳内でアニメの様に勝手に再生される様な状況に私はなりました。
ここまで来ると変な絵師つけた書籍化とか、大事なモノすっぽぬかしたアニメ化とか、して欲しくないのような気もしなくもないような………
まぁ、戯論です。