これは英雄達の物語。されど弱き者たちの物語。

戦乱の世で、主人公は世界の底辺から、絶望の中から這い上がり、奪い、鍛え、戦い、昇り詰めて行く。
戦場で、市場で、王宮で、そして世界の端で、英雄と呼ばれる綺羅星たちと繰り広げる戦い。
それはまさに英雄譚。
心躍る戦いの物語。

しかし、それだけでは、この物語を語るには足りない。

英雄と呼ばれる綺羅星も、英雄達を取り巻く六等星も、人間なのだ。
表に裏に、どこかに弱さを持つ、人間なのだ。

虚飾を知略と鍛錬で実に変え、己の道を突き進みながらも、内に業の叫びを抱え続ける主人公。
戦場に似合わぬ己が弱さ、その弱さを知り、目を逸らさず、弱き者達と歩むうち、大きくなった弱将。
並ぶ者が無い英雄の原石ながらも、己が手から失う恐怖から逃れられず、小さな世界に留まる偉丈夫。
何度失い、何度砕けようと、その度弱さを乗り越え、全て抱えて突き進むため、最強を目指す狼。
頂に昇るほぼ全ての資質を持ち合わせながらも、決して頂に届かないその手を見つめられない英傑。
秘めた想いの長さと深さは比する者が無いながら、触れられる一歩を踏み出せない乙女。
眩い笑顔の奥で何よりも愛されたいと願い、誰よりも愛したいと飛び込んだ最愛。
弱さゆえに弱者の戦い方に長じ、一方で英雄に憧れ、豪傑に心惹かれ、その盾となった一兵卒。

物語を彩る人間達の弱さが、物語を辿る私達の、同じ人間として弱さを抱える私達の、心を打つのだろう。

瞬く数多の星々のうち、貴方の心を打つ星は、この物語のどこかに、きっと有る。