「あれら」
「っああああ!?っあああああ!?」
俺は死んだ!?俺は食い殺された!?俺は、生きている?
自分の体を確かめる、肉を食い千切られた腕は傷一つなく、他にも噛まれた後も何一つ無かった。
だけどはっきりと覚えている、体を生きたまま食われる感覚を、最後は腹を裂かれて内臓を食べられていたあのおぞましい感覚を俺ははっきりと覚えている、そしてあの最後の言葉もはっきりと覚えている。
『次、行ってみよう』
あれは、どういう意味だ?次に、行ってみよう?どこにだ。
いや、これは明晰夢だ。
仕事の疲れが溜まって、さらに団地がこんな事になっていたのだから俺はきっと悪い夢を見たんだ。
もし本当の事だったのなら何故俺は生きている?死んでいる筈だ。
俺の体のどこにも傷跡は無い、つまり酷い悪夢を見たんだ。
それに体に変な違和感もない、きっと疲れが溜まっていたんだ。
俺はそう思って立ち上がると、不意に暑いと感じた。
そう言えば窓は締め切られている、暑いの当然だ。
俺は窓に行きカーテンを開けると外は真っ暗になっていた!?
どういう事だ?俺はそんなに長い間、気を失っていたという事か?
漸く落ち着いた俺の頭は再び混乱し始めた。
そして眼下に見えたその景色に俺はさらに混乱した。
目の前の来た時はタイルは背の高い雑草に破壊され、遊具と言う遊具は錆びて壊れていたというのに目の前の公園は、煌びやかな電飾で彩られサーカスの会場の様な状態だった。
そして公園には
「まだ人がこんなに……」
もしかしたらあの中に父や母がいるかもしれない。
俺はそんな気がして公園が向かう。
そして公園の入り口前で俺は思わず足を止めてしまった。
何かがおかしい、そうサーカス会場の様に賑やかに電飾で飾られているのに声が全くしない。
どこからか聞こえて来る愉快な音楽、聞こえて来るのはそれだけだった。
尋常じゃない雰囲気を感じた俺は後ろに後退ると何かにぶつかる。
振り返り何にぶつかったのか確認しようとして、思わず絶句してしまった。
後ろには陽気な顔を小太りのピエロがいた。
「いらっしゃい!さあ今宵も楽しんで行ってください!」
ピエロはそう言って俺を突き飛ばす、よろめきながら俺は公園に入り違和感の正体に気が付く。
誰も彼も上を見ながらありったけの笑顔で微動だにしていなかった。
あちらこちらでピエロが大道芸を披露しているのに、誰も彼もが上を見上げている。
近くでピエロが火を吹いたりジャグリングをしたり、ナイフ投げや一輪車に乗って綱渡りをしていても誰も彼もが微動だにせず上を向いて笑っていた。
異常だ、公園には人で溢れ返っているのに誰一人としてピエロ達を見ていない。
俺は公園から出る為に人込みを押し退けて出口に向かうとするが、足を直接地面に杭で打ち付けられているとしか思えない程に集まっている住人は動かず、俺がいくら力任せに押しても微動だにしない。
所狭しと並んでいる住人の僅かな隙間を進み何とか出口が見えて時だった、後に現れたピエロが大きな声を上げた。
「それでは皆様、最後のお時間です!人生の最後は鮮烈に!どうせ死ぬなら誰もが逃げたくなる様な、誰もが心に焼き付けてしまいそうな!そんな鮮烈な死に方をしましょう!!」
そう言ってピエロはチェーンソーを取り出した。
チェーンソーは耳をつんざくけたたましい音を上げる。
何をする気だ?そう思いながらも俺は必死に逃げようと這いながら前へと進む。
すると何かが生暖かい物が背中に掛かり俺は振り向くとそれは盛大に俺の顔に掛かる。
真っ赤な液体と腹から飛び散る内臓、目の前には背中からチェーンソーを突き刺された男がいた。
チェーンソーはゆっくりと上に上がって行く。
「あはははははははははははははは!!」
チェーンソーでゆっくりと切り裂かれているのに男は楽しそうに笑っている。
「ひっひっひ…ひああああああああ!?」
俺は思わず絶叫しながら必死に公園から出る為に人混みを押し退け、いや力任せに腕を振り回して退けようとしない住人を殴りながら逃げる。
後ろでは下半身から上を真っ二つになって開きになっている男がいた。
「では逝きましょう!全員集合!!」
ピエロがチェーンソーを高らかに突き上げると各所でそれは始まる。
火を吹いていたピエロは集まった住人を燃やして行く、ナイフを投げていたピエロは住人を次々とナイフを投げ付けて行く、ジャグリングをしていたピエロは力任せに住人を上に投げ上げて行く、各所で次々と人が死んで行く。
なのに住人は逃げる所か笑いながら我先にピエロに向かって行く。
「どけろ!クソ!俺は、俺はまだ死にたくないんだ!どけろ!どけ―――」
「はい、次は貴方ですね」
住人の波に押されて俺はピエロの前に立っていた。
「縦切りOr横切り?それともミンチ?輪切り?開き?」
「嫌だ!違う!俺は死ぬ気なんてない!俺は―――」
俺が言い切る前にピエロはチェーンソーを横薙ぎにして俺を押していた住人の首が撥ねられる。
そして俺の視界も―――。
「次、行ってみよう!」
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