手紙のやりとりに隠された真実

ちょっとタイトルが思いつかなくて邦画の売り文句みたいになってしまいましたが、さておいて。
この小説はタグにあるとおり、書簡体小説です。ちょっと意味を知らなくてググったのは秘密です。どうやら書簡を重ねていくことで物語が展開していくタイプの小説のようで、本作はその形式だからこそのギミックを最大限有効に活用してるなあと思いました。
本作はテーマ「手紙」で短編を募集する自主企画に投稿されたものですが、この企画に投稿された作品の中である意味最も真っ当にテーマ「手紙」に則って書かれている小説ではないかと思います。
話は兵役中の男性が昔馴染みの女性への手紙から始まります。手紙の内容から手紙を書かれているときは戦争の真っただ中であることが分かり、状況の説明と共に関係性も明らかになっていきます。最初は「あー、なるほどね。このあとタイトル通り手紙のやりとりで星を見る約束をして、戦争中でも『あなたに会いにいきます』的な感じで使命よりも感情を優先しちゃって、でもそれこそが人間らしさだみたいな感じの締め方をするのかしらね」という非常に浅い読みがありました。ところが、数回のやりとりのあと状況が一転します。高をくくってすいませんでした……。その後の展開は自身で是非確かめてほしいのですが、一つ言えるのはひとえに作者雲鳴さんの圧倒的な筆致と精緻な話づくりに感服したということですね。
さっき最も企画のテーマに則って書かれているといいましたが、手紙ならではのギミックとそこだけでは終わらない驚きの展開があります。
僕も多少小説を書くのですが、通常どっちかによりがちなんですよね。しかし雲鳴さんはどちらかに終始することなく、トリックを活かしたうえでさらにそこから話を転がしていくという高度な技術で驚かせてくれました。ひとえに圧倒的な筆致と構成力が為せる暴力みたいな感じです。読み終わったとき、正直「草野球企画したらジュニアリーグ優勝チームのエースみたいな人が来たな……」と思いました。つよつよです。これを機に是非ほかの作品も読ませてもらいたいと思いました。
さておき、レビューの締めとしては読もうね!という雑なおすすめになってしまうのですが、手紙のやりとりから分かる時代背景を想像しながら読むとなお楽しめる作品だと思いますので、よろしければ一読してみてはいかがでしょうかー