「愛しいから」ではなく「知りたいから」、彼女に会ってみたかった

北欧の小さな町に住むマーリットには過去がない。
数年前に馬車の事故に巻き込まれ、記憶を失った。
白夜の季節、彼女は医者と共に過去を探してみた。
夫と娘がいたらしいのだが、実感はわかなかった。

我が子さえ思い出せないマーリットの不安や苦悩。
我が子と同じ名の少女と出会った驚きと心の動き。
丁寧な筆致で綴られる母子のひそやかな邂逅には、
切なくも温かな読後感で、胸がいっぱいになった。

願わくは、
マーリットもエリも、
大切な人のそばで笑って暮らしていけますように。

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