光に影は付きもの。よほど脳天気で裕福な者でなければ、人生なんて良い時も悪い時もある。歳を重ねれば、背後には消してしまいたい過去が積み上がる。
女性なりの後悔を抱えて今を生きている主人公に訪れた天啓。「天啓」の具体化って、こう言う物語に仕立てるのね。
しかも、舞台は北欧の冬と来ている。出会いは教会。サンタクロースは現れないけど、神様が見守っていると感じさせる物語。
児童書を中学生向けにバージョンアップしました、みたいな。でも、大人の読者も退屈させないでしょう。
書いていて思い出したが、宮沢賢治の世界に似ている。銀河鉄道よりはグスコーブドリの伝記かな。ドンピシャの賢治作品は無さそうだけど、優しくて哀しい物語です。
別作の「ランランとシャオゴウ」も中々に良い作品でした。
「白矢の雨」なんて、何て言うんだろう。ちょっと迫ってくるような。手塚治虫先生の「どろろ」を大人向けにした感じですかね。こちらも一読を。
記憶喪失の母親と、母親を知らない娘が、運命的に出会って一夜を過ごす物語です。
だんだん明らかになる二人の関係と、マーリットの感情に心が揺さぶられて、6話では涙がこみ上げて止まりませんでした。
子どもがいたことを覚えていないけれど、こみ上げる感情と、身体に刻まれた過去――。
母娘の繋がりとは?
思い出がなければ愛情は湧かないのか?
「母娘」ではいられないのか?
読者に投げかけた疑問を、物語を通して鮮やかに解決していく作者の技量の凄さです。
どうやったらこんなに見事に複雑極まりない人間の感情を小説に閉じ込めることができるんだろう?
「スノーウィ・ハンド」とこの物語を読んでいる間、ずっと幸せでした。
ブラボー!