竜と契ることのできるフリッガ。彼女の秘密、そして、その選択とは。
- ★★★ Excellent!!!
人とは異なる竜という存在。それと契約し、半ば意識や記憶を共有することのできる神官のような存在、プライア。中でも最高神官とされるサプレマのフリッガは、とある事件で父を亡くしていました。
物語は、彼女が父を亡くした事件に巻き込まれた青年、ヴィダに会いにいくところから始まります。彼らが住まうユーレの女王デュートからある命を受けた二人は旅に出ることに。
竜と契り、その力を借りることができるフリッガは、けれどどこか不安定で、他者との関わり方も何やら不器用。読んでいるこちらがハラハラしてしまいます。けれどそれには理由があって——。
ファンタジーな世界観ながら、登場人物たちのセリフや端々からあれ……? と首を傾げることがあって、でもその違和感こそが物語の根幹に関わってくるキーとなっています。さらには世界そのものと登場人物に秘められた謎がとにかく気になって読む手が止まらず、ほぼ一気読みしてしまいました。
人と竜、自我、他者との関わり。フリッガや彼女の竜たちが出した答えは一つの標となるのかもしれません。現実世界においても他者とどう関わっていくのか、自分の信じるものはなんだろうか、などを改めて考えたりも。
と、堅苦しいことを書いてしまいましたが、練り上げられた世界観、個性的でどこか愛嬌のある竜たち、さらには敵側のキャラクターも実に魅力的で、バトルアクションあり、ほんのり恋愛要素(?)もあり、と実に盛りだくさん。
30万字弱の長編ですが、その長さを感じさせないぎゅぎゅっと「物語」が詰まった一作。
実はシリーズの『アルモニカ』を先に読んでしまっていたのですが、えっ、この二人が!? とびっくりしてしまうので、他のシリーズも楽しみです。