十二時を告げる音が響いた時、ようやく解けてくれた魔法。

純粋で一途な女の子。大人びているようで、どこか子供っぽい男性。
そんな彼女らの、夜の十二時に至るまで――日付けが変わってしまうまでの、最後の〇分間のお話です。
それまでの二人。そこからの二人。日を跨いだ二人の仲は、一体どのような変化を迎えるのでしょうか。

その時に至るまでに繰り広げられる、微笑ましい限りの回想。
合間に挟まれる、現在の二人の会話。
そんな二つの対比により描かれる、積み重ねてきた時間、築き上げてきた関係性。
それらが濃密なまでに、このたったの数分間に凝縮されており……読んでいるだけで自然と笑顔になれるような、温かな気持ちへと導かれていくような感覚でした。

「落としていったガラスの靴の持ち主を探す王子様」ではなく、「忘れられた傘の持ち主を待ち焦がれるお姫様」。
とある場面にて個人的にそんな感想を抱いてしまい、思わずクスリとも。

やがて約束の時を迎えた、物語ラストの二人のセリフが、また一段と格別でした。
これからの二人の日常が垣間見れたような、ちょっぴり美味しい気分を味わわせてくれます。

元気が出るような、明るく甘めのお話を欲してる方。ぜひぜひ、ご一読くださいませ。

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