綺麗なあの子の綺麗な面の裏側を見た夏

だいたい都会から田舎に帰ってくる人間なんてろくな奴はいないんですよ、なんて田舎住まいの私は思ってしまうわけです。娘一人父一人で田舎に暮らすというのがどれだけ奇異なことか……というのは都会の先進的な方々からすれば差別と偏見に満ちた発言なのでしょうが、実際田舎に住む人間はそういう差別と偏見に満ちた目で見てくるわけで、「きれいなきれいな彩花ちゃん」は「都会から来た向こう側の人間」だったという、その憧れの裏返しで誰にも助けてもらえないわけですね。
だから本当は主人公の「僕」の家族の鈍感さこそ救いだったわけなんですけど、「僕」はそれを活かすどころか、逃げてしまった。
しかし小学生の「僕」にそこを頑張れと言うのも酷な話だし、他ならぬ彩花ちゃんから「僕」は学校での居場所を壊されたわけで――そして子供にとって学校にいづらくなることほど恐ろしいことはなく――
救いなどどこにもありはしなかったのだ……。
空色の朝顔と白いワンピースの対比がとても鮮やかで美しい話でした。

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