空色朝顔

作者 田所米子

57

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★★★ Excellent!!!

終始「僕」目線で語られる物語は、当然ながら「僕」が見たもののみで構成されます。
「僕」がみた彩花ちゃんは、白いワンピースを着てキラキラ手の届かないところで輝いていた……輝いていたのだけれど……。
「僕」視点で美しさの先を知ってください。

青い朝顔に、白いワンピース。
清々しいまでに鮮やかな風景に見え隠れする残酷な闇。
その対比がさらに美しさを引き立てていました。

文章も読みやすく、ストーリーに引き込まれました。まさに現代ドラマ、文学といったジャンルが似合う作品。
おすすめです!

★★★ Excellent!!!


乱れ咲く朝顔が一つ一つ繊細に異なる表情をみせるように、この作品の随所に散りばめられた「朝顔」という言葉にはいくつもの意味が宿る。その不気味な青白さは、あるいは少年であり、あるいは罪を思い返す現在の彼であり、あるいは祖母であり、あるいは少女の父であり……しかし要するに、田舎そのものであった。豪奢な館を、蔓を伸ばし這い回り犯す、静かな魔物であった。そして、少女では、決してなかった。

少女だけが異邦人だ。都市の血を半ば持つ少女は、しかし田舎から逃げきれぬ血も半ば持っていた。母は、彼女を捨て置いて消えたことを見逃してはならぬ。魔物の重圧に縊り殺されたのが、縛られた異邦人たる少女ではなかったか。彼女の肌に呪いのような青を刻みつけたのは、誰でもなく、また、誰でもあった。
「朝顔」を踏みつける青みがかった少女の脚を、美しいと見るのは、やはり罪であろうか。田舎に育った私の、罪を突き付けられたがゆえの、祈りであろうか。それでも傷は美しかった、と……。
少年の回想にも、このような祈りが秘められているとみるのは、自らと彼をひきつけ過ぎか。しかし、惨状を奥に秘めて清廉なワンピースとカーテンの重なりを、妖しいと言わずして何と言おう。この白を語り直してしまう彼の眼には、祈りの影が差している。

この作品を朝顔の咲く季節に読まなくてよかった。
禍々しい効能を秘めながら、静謐に咲く花は、おそろしい。

★★★ Excellent!!!

だいたい都会から田舎に帰ってくる人間なんてろくな奴はいないんですよ、なんて田舎住まいの私は思ってしまうわけです。娘一人父一人で田舎に暮らすというのがどれだけ奇異なことか……というのは都会の先進的な方々からすれば差別と偏見に満ちた発言なのでしょうが、実際田舎に住む人間はそういう差別と偏見に満ちた目で見てくるわけで、「きれいなきれいな彩花ちゃん」は「都会から来た向こう側の人間」だったという、その憧れの裏返しで誰にも助けてもらえないわけですね。
だから本当は主人公の「僕」の家族の鈍感さこそ救いだったわけなんですけど、「僕」はそれを活かすどころか、逃げてしまった。
しかし小学生の「僕」にそこを頑張れと言うのも酷な話だし、他ならぬ彩花ちゃんから「僕」は学校での居場所を壊されたわけで――そして子供にとって学校にいづらくなることほど恐ろしいことはなく――
救いなどどこにもありはしなかったのだ……。
空色の朝顔と白いワンピースの対比がとても鮮やかで美しい話でした。

★★★ Excellent!!!

綺麗なタイトルに惹かれて足を運び、見た目とは裏腹のドロドロとした内容というギャップの差に驚かされました。今の現代社会が抱える闇を、夏の風物詩をタイトルに置いて表現するという斬新な手法は見事に私の心を捉えました。
これに登場するヒロインのイメージが最初と最後で大きく逆転するのは珍しく、そして読み手の心を引き込む美しいまでの凄惨さが尾を引きます。明るく活発なだけに、その分闇も深い。しかし、最後まで読む価値はあります。
夏という今だからこそ試しに読んでみては如何でしょうか?

★★★ Excellent!!!

僕と彩花ちゃんの対比が魅力的です。

朝顔をキーにして、僕が見たかったもの、見たくなかったもの、見てはならなかったものが描き出されていく。僕と彩花ちゃんの接点とも、きっかけとも言えた朝顔は、僕にとって忘れられない存在になった、というのも印象です。
爽やかな夏の情景、その象徴である朝顔。
対して直視する勇気を持てなかった、少女に横たわる黒い感情。

夏の終わりに読みたくなります。忘れてはならない思い出として、刻み付けられる物語です。