道化の晩餐

後藤 大地

序幕〈プロローグ〉

 真夜中の薄闇で。


 真夜中の薄闇うすやみで。


 奇妙に歪んだ食堂で。


 蝋燭ろうそくは蜜のようなどろりとした光で、影をおどらす。


 薄く湿しめったように、つやを帯びた黒いテーブルには、

 豪華ごうか絢爛けんらんな料理が並ぶ。


「君のために特別に用意した食事だよ」


 山のように積まれた料理の向こう側から声がした。

 声の主人あるじの姿は、影に隠れ、よく見えない。


遠慮えんりょせずに食べたまえ」


 カラン、と乾いた音がした。

 テーブルの上には白く透き通った陶磁器とうじきの取り皿と、銀のナイフとフォークが置かれていた。


「そして、もしよければでいいのだが…」


 声の主人は遠慮がちに、野太いしゃがれ声で言う。




「––––––この晩餐の道化にならないかい?」

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