読み終えるのが寂しくなる小説

わたしはキタハラさんの作品には「心に穴が空いたような喪失感、欠落感」があると思っているのですが、今作も類に漏れず、いい意味で読者が置き去りにされていきました。
物語は続いているのに、わたしたちは手を伸ばすばかりで列車の手すりにさえつかまることができない。
そういう状況で物語がどんどんどんどん進行していく。わたしたちを引っ張って。
そこに早坂長太郎が現れる。彼は場を乱すけれど、物事を簡単にしていく。早坂長太郎に会った人達は彼に、彼のカリスマ性に大いに影響を受けて物語の続きを歩く。
結局みんな、どこに行きたいのか?
何者になりたいのか?
それは全員、叶ったのだろうか?
興味が尽きることは無い。

わたしはこの小説をお風呂で少しずつ読みました。読めば読むほど終わりが近づいちゃうことが悲しい小説は久しぶりでした。
「熊本くん」だけではなく、「キスをしても」も書籍化希望です。
もちろん、吉本さんと村上さんの棚に並べますよ!

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