埋まることのないさみしさ

なんでもない、淡々としたルームシェアの話なのかなと思ったけど、そこはキタハラさんの作品でした。
日常が進みつつもそこはかとなく漂う、不穏な気配。
ちらちらと姿をみせ、やはり山場は物語が収束する後半に一気にきました。この盛り上がりに向け全てが進んでいて、ぐいぐいと物語の世界に引き込まれていった。
物語が加速する流れに引き込まれて、まさにこの引き込まれるという感覚を感じれたことが何よりも良かった。
そのポイントは読む人によっていくつかあるかも。だけれど、追いかけても手の届かない相手の影を求めて重ねていく経験は誰にでもあるのでは。
自分の心の中の経験を引っ掻きながら、登場人物のつながりを応援して読みました。
(ただ、誰と誰がつながってもうまくはいかないような、心配をしながら読みました。)

そして、優等生キャラだと思っていた主人公の影の部分。
自分を保つためにか、彼ののらりくらりとしているようで頑固な姿勢がまたよかった…。キタハラさんは魅力的な、好きになってしまいそうな人物像をつくりだすのが上手いです。

読んだ後、主要人物の空白の時間やその後(最終話後)についてしばらく考えていました。