隣の席に座ったあなた

弦巻耀

隣の席に座ったあなた


入学式の日

隣の席に座った貴女あなた

私よりずっと背が高くて、とても大人びて見えました


初めて一緒に学食に行った日

食べるのが遅い私を

貴女はじっと待っていてくれました


文化祭の前日

夜遅くまで準備に追われるみんなのために

貴女と二人、コロッケ屋さんに買い出しに行きました


寒くなってきたある日

珍しく憂い顔を見せた貴女は

学校になじめないのだと、私にこぼしました


バレンタインの日

小さなチョコレートをあげたら

貴女は怪訝そうな顔をして食べてくれました



クラスが変わっても

昼休みはよく貴女の教室に遊びに行きました

定期試験がある時は

二人で学校に残って一緒に勉強することもありました



体育祭の日

借りものの学ランを着て応援団長を務める貴女と

並んで写真を撮りました


行事が終わって片付けをしている時

ふざけて「壁ドンやって」と言ったら

学ラン姿の貴女は

壁を背に立つ私の顔のすぐ横に手を突いて、下の名前を言いかけて

途中で変な笑い声を上げました



卒業して、別々の大学に行って



夏休みのある日

久しぶりに会った貴女は

「男って、難しいよね」と、呟きました


私の初恋は終わりました




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

隣の席に座ったあなた 弦巻耀 @TsurumakiYou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ