〔神狩り〕と現下の国家賢人は、イールの地で自身の在りようを見つめる。

神と人の間に在るいにしえの〔神狩り〕ミランと国家賢人のファウナがいるイール地方は大自然が隣接する土地。
個性たっぷりの動植物を育むその優しいだけではない自然を、分かりやすくそして過不足なく書き上げる作者さまの腕は、見事の一言に尽きます。
日差しの色が、植物の葉の揺らぎが、動物の息遣いが文章越しに伝ってきます。その筆致を確かなものにしている作者さまの知識も脱帽もので、ハイファンタジーでありながら世界のディテールを現実のものであるかのように感じられる作りは、ため息が出るほど美しいです。
人物描写においてもステレオの部分は明確に、細かな機微は登場人物の性格に裏付けされた書き分けが実現されていて、本当にアマなのか…?と疑ってしまうほどでした。

登場人物たちの心境が物語を追うごとに少しずつ変化していくさまを丁寧に綴ったこの作品は、全編通して古きをたずねて新しきを知るという考えが根底にあるような気がします。そしてその上で、今に生きる人々は命をどう営んでいくのか。
ミランとファウナがたどり着く答えを、読んで追ってみてはいかがでしょうか。
優しいだけじゃない。それでも、たしかな温かみのある日々が、そこにはあるはずです。

その他のおすすめレビュー

えむ/ぺどろさんの他のおすすめレビュー25