かわいい雑学、かわいいヒロイン、情けない主人公

あっという間に読み終わった気がしますが、18万字以上あったんですね。全く気になりませんでした。テーマの雑学がわかりやすい。最初は「少し難しいかな」と感じたのですが、二章以降はツルツル読めます。

そしてそれはきっと、ヒロインに感情移入できるからなんじゃないかな、と思うのです。というのもこのヒロイン、自分が書く小説の評価を主人公にお願いするんですよ。そして、そのくだりでドキドキしてしまう。まるで自分が書いた話が読者に本音でジャッジされるかのようなあの緊張感がシンクロしてしまうんです。

その一方で読者である主人公はかなりのヘタレです。進学校に通っているだけあって頭は良く、性格も穏やかなんですが、なんというか「自分」というものがないんですね。運の良さで生きている気がします。弱気なあまり失敗を恐れ、自ら一歩踏み出すことをせず、グダグダと、周りやヒロインにおぜん立てされながら、たまに筋を通そうとして頑張るけど失敗やらかすとか、本当に情けない。

しかしこの主人公の内面が、なぜか私の高校時代そのままというか、読んでいて羞恥心がむくむくと。ちょっとそういうのやめろよ読んでるこっちが恥ずかしいじゃねーか!っていうドキドキ感。気がついたら結局主人公にも感情移入してた。まったく、とんでもない話ですよ。

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