その《不可思議》なる道中をちょいと覗いてみませんか?

時に優しく、時に怖い…昔話のような奇譚集です。美しい旅人がいく先々で出逢う様々な不可思議な現象と不可思議な《もの》…そうしてそれに係わってしまった様々な人物のこころの動きと行動が綴られています。
事件の真相には確かに人非ざるものが隠れていますが、事件の顛末を決めているのは他ならぬ人であります。旅人の言葉を信じ、助かることもあれば、助言を疑い、拒絶して不幸に落ちていくことも。当の旅人も手を差し伸べることもあれば、ただ静観していることもあります。一篇読み終えた後にはこころがほんのりと暖かくなったり、背がぞっと寒くなったり…

この短編集の特徴として、結末を読者の想像に委ねるようなかたちになっている噺がいくつもあるのですが、これが凄くいい。想像を掻きたてられ、あるいは私だったらなんて頁を閉じた後も物語に浸ってしまうほど。

気軽に読める短編連作ですので、晩夏の、段々と長くなってくる夜のおともにいかがでしょうか。