第7話 リリック・グローズという男

いま、デジャブみたいなことが起きたんだけど。ていうか、なんでおっさんがここにいるんだよ。


「そりゃ、死後の世界だからじゃのー」


あれ、なんでそんなことをいうの?この感覚、心を読まれてるってことは、もしかして……おっさんも神様!!


「そうじゃよーー」


やっぱり心を読まれてる!

茶髪のおっさんは、驚きを隠せない俺に向かって、元気が湧き水のように溢れるほどのピースサインと笑顔を見せる。

いったいどういうことだよ。


「ふふふっ、なかなか焦っているようだな」


おっさんがなんかドヤ顔で言ってくるのに少しイラつく。


「ワシは、モノホンの神様、詳しくいうと、時の神、クロノスじゃよ」


おっさんはそういうと、背中から翼を生やして、何もなかった空間から、なにやら黄金の杖を生み出す。ヘルとは違う、神々しさが信憑性を高める。

マジで神様だったのか。俺はその光景を見ると、事実だったことに精神的な刺激を受けて、口が閉じなくなる。


「で、話は変わるのじゃが……」


なんか話題転換しようとしている、って…


「おい、さらっと話を進めんじゃねーよ!」


「なんじゃよせっかちだのー、何か問題か?」


「問題も何も、じゃあなんだ、おっさんはあのとき死んでないのか?ていうか、ずっと隠してたのかよ!」


俺は何故か裏切られたような気がして、少しイラついていた。そんな姿を見ておっさんの顔が真面目になる。


「すまない、それは本当のことだ」


おっさんは男らしくそう断言する。

その勇ましさに俺は後を引くしかなかった。

俺も冷静さを取り戻す。


「じゃあ、なんでそんなことをしていたんだよ、別に神様なんだから俺みたいな一般人の面倒なんかみる必要もないんじゃないか、義務かなんかか?」


そう聞くと、おっさんはヘルを見る。


「その事なんだが、ワシがお前を育てていたのは、お前が求めていた人間に値するかどうかを見極めるためじゃよ」


求めていた人間?見極めるため?おっさんの口から出た言葉に違和感しか感じられなかった。

いったい全体どういうことなんだ。

おっさんは俺の考えを読んでからなのか、もう一度ヘルの方向を見たおっさんは俺の両肩を掴んでこちらを真っ正面に向いて、こう言った。


「お前にヘルを任せられるかどうかを調べるためじゃよ!」


「は?」


だから、どういうことなんだよ。


「お前は、しっかりとした精神を持ち、老人にも村の子供たちにも優しく接して、善良な心と、人のために働くことを忘れない、そんな少年だと私がお前を育ててきたなかで感じた。」


おっさんは次から次へと俺の事を誉めまくる。ありがたいんだけど少々大袈裟過ぎやしないか?

俺は照れながらも、それがなんなのかが不思議に思った。


「ということで、ダリーよこれからヘルをよろしく、ということで!」


はぁ!

俺が驚く反応に笑いをこらえず吹き出すおっさんに、何故か顔を赤らめるヘル。

俺はそんな状況のなかで、学園や遅刻等を気にせずただ、時間を過ごすだった。

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