第3話 ワープ登校
光に包まれたとたん、体に強い衝撃が走る。
まるで、壁に激突したかのように、いや、目の前にある壁はどうやら本物のようだ。
衝撃の反作用か、俺は勢いよくしりもちをついた。
痛い、しかし状況判断ができない中、混乱してしまいあまり対応できない。
ここはどこだ、学園は、遅刻は?様々な疑問付が頭の上に浮かんでくる。
すると、この疑問の答えを教えてくれるのか、後ろから声と同時に肩を叩かれた。
「ねぇ、君も新入生?大丈夫?」
透き通るような声に反応して後ろを振り返ると、そこには同じ制服を着た、可愛らしい女の子がこちらを見ていた。
サラサラな黒髪のショートヘアーと、色に会わせたうるやかな瞳が、可愛らしさとは違う妖艶さを表していた。
「君は?」
驚きと、動揺からか、なかなか声がでない喉を振り絞って、そう聞いてみる。
質問に質問を返すという失礼な行為をしてしまったが、もう取り返しのつかないことだ。
すると彼女はニコッと笑って、こちらに手を伸ばした。
「私は、あなたと同じ新入生のレイ・アナリーシャ、よろしくね!」
笑顔がまぶしいこの子の手をとり、立ち上がる。
レイと話してか、少し落ち着きを取り戻してレイの方を見て俺も質問に答える。
「あぁ、大丈夫だよ、俺の名前はミリオン・ダリー、よろしく」
レイの笑顔には敵わないが、俺も同じように微笑んでみる。
すると、レイは何かを考え、そしてこう言った。
「それじゃ、ダリリン!私達、お友だちになりましょう!」
?
レイの言っていることを半分しか理解できなかった。とっさに問いただす。
「ダ、ダリリン?」
「そう、ダリリン!」
レイはまた微笑む。俺はそれに流されるまま、許可してしまった。まぁ、距離が近づいたから良しとしよう。
それじゃ、気を改めてレイに今の状況を聞いてみることにしようか、と口を開く。
「ねぇ、アナリーシャさん、ここって何処かな?ていうか、学園に早く行かないと遅刻しちゃうよ!」
すると、先程まで微笑みを浮かべていた表情は、すぐさま笑い顔に変わった。
「ハハハハハハッ!何言ってるの?ダリリン」
大きな声で笑う。バカにされているようで普通なら怒るべきだが、あまりの豪快な笑いに怒る気すら起こらない。
「遅刻は大丈夫だよ!だってもう学園の中だよ、それと、私のことはレイでいいよ!」
俺は驚きを隠せないまま、口を開けっ放しになっていた。
今、レイで良いって、ってそこじゃなくて!
ここが学園の中だって、ええっ!
「なんで!俺はさっきまで校門付近にいたのに!」
「あはははは!ダリリンってワープ初めて?」
ワープ?
初めて聞く名前に俺は興味の目線をレイに向ける。
それに反応するかのように、レイは丁寧に説明をしてくれた。
「君が包まれたあの光、というかあの魔法がワープって言うので、あそことここは繋がっていたって言うわけ!なのですよダリリン君」
なぜ君づけされたのかは別として、人生で初めてのループに体が震えていた。
おっさんから色々と魔法は教わっていたけど、ループなんて高等魔法は知らない。
そう、未知の領域だ。
すると、まだレイの、いや、レイ先生の授業は終わってなかったらしい。
「このワープの魔法を使って、学園に対しての善人と、悪人を見分けて通すの、だから生徒である私達も通れたの!ダリリン君わかった?」
「あぁ、ありがとうレイ先生」
俺はふざけ半分でレイにそう言ってみた。すると、案外レイ本人も気に入ったみたいだ。
そして、レイから思わぬ言葉をプレゼントされた。
「それじゃ、改めて…」
窓から優しい春風が、彼女の髪をなびく。
そして、暖かなさんさんとした太陽が、廊下に立つ二人の学生の姿を照らす。
春爛漫を示すかのように、桜の花びらが窓から風に乗り僕らを包みあげる。
可愛らしい女の子を中心とした、魔法を使っても表すことが出来ないであろう、美しい光景が俺の目の前に広がる。
「第一ウェルサレム魔法学園へようこそ!」
おっさん、あの世で見てるか。
登校初日、俺には、ミリオン・ダリーには友達ができました。
「これからよろしくね、ダリリン!」
少し可笑しくて、可愛らしい女の子、レイはそう言って、微笑んだ。
「あぁ、よろしくな」
俺も同じく微笑んだ。
今はただ、この時間が長く永遠に続いてほしいことを祈るばかりだった。
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