第5話 白と紫

何か声が聞こえる。

後頭部が痛い、鈍器に殴られたかのように。

痛みが広がり、少しスースーする。

ヤバいこれ完全に出血してるな。

なんで、こんなことになったんだっけ。

あぁ、思い出した、俺、女の子のオッパイを揉んで、その女の子に後頭部を思いっきり蹴られたんだ。

まぁ、完全的に俺が悪いんだし、女の子のオッパイに触れられた終末も悪くは無いかもな。

それにしても、あの女の子といい、レイといい、今日は可愛い子にいっぱい会えたな。

あ、やべー、気が薄くなってきた。

もう、死ぬのかな。

まだ頭が痛いし、体動かないし、瞼さえ開かない。

これは死決定だな。

俺は諦めて、力を抜いた。


その瞬間、俺は真っ白な空間に立っていた。

何もない、だけど何かがこの空間を支配している、そんな白い所に。

校門前同様、瞬間移動だろうか、それにしても突然だな。いや、もしかして俺死んだから、天国とかに来たのか?

体はもう平気だし、ていうかいつも以上に元気って感じだし。

疑問が頭を回ると、後ろから声が聞こえた。


「ねぇ、あなたは……」


俺はその声の方に体を向ける。

そこには妖艶な紫色の長い髪に、整った人形のような可愛い顔、そして、何故か真っ黒なゴスロリな格好、見た目ロリ体型な、これまた一部の人たちからは人気のある女の子だった。

にしても、今日の俺は可愛い子に会いすぎだろ!

すると、俺の耳に、紫の彼女の声が遅れたように聞こえてきた。


「馬鹿で、変態なの?」


俺は少しフリーズした。

なに言ってるのこの子。


「え、いや、俺は変態ではないと思うけど」


否定は……出来ないかもしれない。

まぁ一応、撤回はしておく。


「それじゃ、馬鹿なの?」


そう来たか。

俺はよく考えてこう言った。


「多分」


もちろん事実だ。

しかし、この子は一体何者なのだろうか。そして、ここはどこなのか、俺は彼女に聞くことにした。というか、俺、最初はただ単に遅刻したくなかっただけなのに!


「なぁ、ここってどこなんだ?変なこと聞くけど俺って…」


「死んだわ」


!?

ま、まじでか。覚悟はしていたけど、実際にそうだと言われると、少し怖くなってくるな。


「それじゃ君は?」


彼女は、俺の問いに反応したのか、くるりと回り、決めポーズをとってこう言った。


「私はヘル、死の神、ヘル」


彼女の言っていること、そして名前が全く頭に入らなかった。いや、躍りのせいとかでもあるけども。

混乱状態になった俺はその疑問をそのままぶつけた。


「お前は、神なのか?」


「お前、じゃない、私はヘル、死の神」


「まじで?」


「マジでーーす!」


俺の人生はこいつと出会ったことから、大きく変わった。悪い方に。

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