息子を誘拐された主人公。犯人に指定されたコインロッカーへ行くと、その中には大量の現金が! そして犯人からの要求は、この三千万円を二時間以内に使い切れと言うものだった!
もらったお金で好きなだけ買い物をしても良い……ある意味夢のようなシチュエーションであるが、実際に金を使う立場になってみると、三千万円を一気に使うというのはハードルが高いのだ。しかも犯人は二十万円以上の高級品は買っちゃダメとか、土地やサービスのような無形のものは買っちゃダメとか色々注文をつけてくるし、息子の命がかかっているとなればなおさらだ。
かくして男は一心不乱に買い物を続ける。愛する息子を助けるために……。
こんな無茶苦茶な要求に主人公が翻弄される様子も楽しいのだが、あくまで本作はミステリー。ちゃんと犯人の理不尽な要求にもしっかりと解答が用意されている。一体何が目的で犯人は男に金を使わせようとしていたのか……短編ですぐに読めるので気になった人は今すぐ答えを確認しよう!
(「奇妙な犯罪」4選/文=柿崎 憲)
ポテろんぐ様の傑作「誘買い犯」。
以前に一度読んだ時に印象に残っておりまして……この度、再度読みかえしてみました。
なんと!
「息子を返してほしいなら、ありったけのお金をかき集めてこい!」ではなく「制限時間内に用意されているお金を使いきれ!」とは、普通の(?)誘拐犯のお話ではありません。
主人公も普段なら(息子を人質に取られていない状態なら)うれしい&大切なものでしかないお金が……それも”超大金”が、ノルマクリアごとに”時間内に消費しなければいけない単なる紙切れ”と化していくように思えました。
そして、最後のオチには、うなりました。
まさに”なるほど。”と!
最後まで目が離せない見事な構成のサスペンスです。
そして、一連の流れに”一本の信念が通っていた”ことを、その最後に突き付けられるサスペンスでもあります。