* 終わって始まる
01.
今日もクロエに声をかけてもらえた。
だけど明日からは難しくなるんだろうな。まさか、誰ともペアが組めないなんてことはないだろうし。
……クロエ、君の優しさを分かっている奴と組めることを祈っているよ。
だからランベール、おまえは駄目だ。
02.
これはどんな奇跡だろう?
あっさり君とペアになれるなんて思わなかったよ!
顔には出てなかったと信じたいけれど、緊張していたんだよ……
まだ、心臓が煩いんだ。
03.
夜まで待ってと言ったは良いけれど。
僕はクロエに何を伝えなきゃいけないんだ? 喜び? 感謝?
じっくり考えないと、とんでもないことを書き連ねそうな自信があるな。
――手帳は鍵付にしておこう。
04.
目の前でクロエが困ったり笑ったりしている。
ヤバい、ヤバ過ぎる。
できれば手を取らせてもらいたいけど、そこまでやったら、僕の心臓が保たないかもしれない。
するけど。
05.
良い匂いがする。
これは忍耐力を試されているんだね?
06.
喋らない相手なんて、か。
退屈なのか、そうだよね。
僕相手に延々喋っていられるのは、ランベールくらいだ。
……なんだ、あいつ貴重な奴だったんだな。
07.
随分と高い枝に引っかかってしまったね。
細い枝だから、先の方まで行くのは難しいだろうけど、あの分かれている部分まで登って揺らせばなんとかなるかな?
待ってて、クロエ。
08.
結婚か。クロエは結婚するのか。仕方ないよな。
……僕は?
いや、なんでもない。
09.
どうして
僕を逃がさない、という気合いは分かったから。
……クロエを困らせないでくれ。
10.
この間と同じドレスだ。君らしい。
それより、僕はどうやって君を家まで案内すれば良いんだ?
素直に馬車を送ってもらえば良かったのか?
手を引く――のは許されるのか!?
11.
余計な事を喋るなよ、兄さん!
本当に何も言うなよ!
ああ、絶対に余計な事を言って困らせているな……
ブリジット、悪いけど、早くダンスを終わらせてくれよ!
12.
知ってた。知っていたよ、クロエ。
君が運動音痴なのは知ってたから。
足を踏まれたくらいで、幻滅したりしないから。
そんな悲しそうな顔をしないでくれ。
僕の恋はそんなに軽くない。
13.
……やってしまった。
伝えちゃ駄目だと、あれだけ考えていたじゃないか。僕は莫迦か。
ほら、見ろ。クロエは困っているじゃないか。
卒論以外のことを話そうとしてくれない。
14.
泣きそうな顔をしないでくれ。僕も泣きたい。
15.
さっさとこのくだらない見せしめを終わらせろ。
……クロエが居眠りしてたのは、僕のせいだと思うけれど。
本当にごめん、クロエ。
僕のせいで君が苦しむことはないんだよ。
16.
つまり、皆の話を繋ぎ合わせると、ランベールがクロエに無茶をしたってことでいいんだな?
そうとなったら、ランベール。歯ァ食いしばれ。
18.
僕から離れてゆっくりしてほしいから、何も告げないで行ってこようと思ってたんだよ!
ブリジット、君は間の悪いことばかりするなぁ……
って、嘘だろう? 一緒に行く?
19.
二人で出かけてこいって、無茶言うなよ兄さん!
今、二人きりとか、勘弁してくれよ。
ただでさえ気まずいのに。
20.
返事は要らないって書いたよね!?
そんな泣きながら何を言ってくるんだ、君は!
……って。
今、なんだって?
21.
あっさり侵入でき過ぎだろう!?
クロエ、お願いだからもうちょっと警戒してくれ。
僕だってその気になれば眠っている君を…… いや、なんでもない。
22.
兄さんと同じ気分だよ。
やられた。
よりによって、クロエに……!
すこーし同情してたんだけど。止めた。
23.
外した。銃本体に
24.
手を伸ばされている、ということは。
受け止めて良いんだよね?
僕は、君を抱きしめる許しを貰ったんだね!?
25.
良かった合格した。
クロエに伝えなきゃ。
……ランベール、おまえも進学するのか。
なんで腐れ縁を喜んでいるんだ。構わないけど。
26.
そのとおりだよ。怖いんだよ。
でも。
そうだね。待っていても、世界は変わらないのならば。
君に手を差し出すことができたんだ。それより難しいことがあるはずなんて、ない。
……まずは、この愛しいという気持ちを伝えさせてもらっていいかな?
27.
前回より緊張しているな。手が震えている。
クロエのご両親にどうやっても認めてもらわないといけないから、だ。
だって、もう、この手を放せないんだよ。だから、行くしかない。
僕の世界と未来を広げてくれた、愛しいクロエ。
この先もどうか、僕と。
(了)
広がる世界の端と未来の話 ―ベルテール王国より― 秋保千代子 @chiyoko_aki
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