その愛は互いを食い破る。

 人間の腹から生まれる異形。母親の命とひきかえに身体的「異常」をかかえて生まれ落ちた存在である。白い鳩の羽根を持つ異形・アンゼリカは、迫害から逃れるため人里離れた森でひっそりと暮らしていた……アンゼリカをとある屋敷から連れ出した人間の男・ローガンとともに。ローガンを愛し、彼との日々に幸せを感じていたアンゼリカだったが、迫害と戦う異形たち「反狼の牙」と出会うことでそのあり方を見つめ直すことになる。

 アンゼリカとローガンの愛の物語です。異性としての想いは恋なのか、愛なのか。その境界線がわからず苦悩するものもありますが、二人のそれは間違いなく「愛」です。それぞれが少しずつ、言葉にできなかった感情と向き合うことで、愛の形をより明確なものへと変えていきます。恋ではなく、迷いなく愛であると言い切れるアンゼリカにも信念を感じますし、愛を伝えてくれないローガンに対しても、彼なりの愛に対する考え方を垣間見ることができます。異形への迫害という差別の明確に存在する世界の中で、二人の関係性が強く表れた物語だと思います。

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