人間の腹から生まれる異形。母親の命とひきかえに身体的「異常」をかかえて生まれ落ちた存在である。白い鳩の羽根を持つ異形・アンゼリカは、迫害から逃れるため人里離れた森でひっそりと暮らしていた……アンゼリカをとある屋敷から連れ出した人間の男・ローガンとともに。ローガンを愛し、彼との日々に幸せを感じていたアンゼリカだったが、迫害と戦う異形たち「反狼の牙」と出会うことでそのあり方を見つめ直すことになる。
アンゼリカとローガンの愛の物語です。異性としての想いは恋なのか、愛なのか。その境界線がわからず苦悩するものもありますが、二人のそれは間違いなく「愛」です。それぞれが少しずつ、言葉にできなかった感情と向き合うことで、愛の形をより明確なものへと変えていきます。恋ではなく、迷いなく愛であると言い切れるアンゼリカにも信念を感じますし、愛を伝えてくれないローガンに対しても、彼なりの愛に対する考え方を垣間見ることができます。異形への迫害という差別の明確に存在する世界の中で、二人の関係性が強く表れた物語だと思います。
人と同じ心を持ちながら、人とは違う形で生まれてきた『異形』の少年少女たち。
そんな異形の一人であるアンゼリカは、自分を捕らえていた檻から助けてくれたローガンと森の奥でひっそりと隠れて生活していた。
異形であるがために外には出られないアンゼリカ。それでもローガンがいれば幸せ。
そう思っていたアンゼリカの小さな世界を壊したのは、同じ異形であるルゥとウルソンとの出会い。
外の世界では異形が自由になるべく革命の計画を進めている。その事実をしったアンゼリカはローガンに小さな不信感を抱き始める。
マイノリティな人間や思考が描かれる作品。
他とは違うということは悪なのか、そう生まれることは罪なのか。
そう悩み苦しむ登場人物たちがたどり、選んだ結末を誰かが否定する権利はあるのか。
そう考えさせられる作品です。