Ⅵ
「……んくっ……ふっ……んんっ……!」
……んん……?
僕は、またちょっと意識を失っていたのか……?
だけどなんだか少しだけ身体が軽いような……?
何気なく横を向いてみると、人形のような整った顔立ちをした少女が苦悶の表情を浮かべているのが映った。
な、なななんでこんな至近距離に、輿水さんが……!?
少し動揺して思わず視線を下に落とすと、彼女は素足のまま傷だらけになっているのがわかった。
すぐ側で感じる、荒い吐息。
それらの知覚情報を受け取って僕の脳がやっと状況を把握。
こんなところでくたばってはいられない。
足を地につけて踏ん張ってみせる。
「……!? 気が付きました!?」
「……おかげさまで。ありがとう」
そこからは二人三脚で、一歩一歩踏みしめるのを確かめるように下山した。
『
「『照灯祭』は、もともと海に直接潜って漁をしている人たちが迷わず帰って来られるように村じゅうの灯りを絶やさないようにしていた、と伝わってる風習からはじまってるそうです。あと……裸足なのは」
「『
「……ふふ、あなた相手には、蛇足もいいところでしたね」
このほかにも、色々と興味深いことを聞くことができた。
無事帰った暁にはもっと掘り下げて調べていきたい。
「この祭のメインである私が抜けたことできっと今頃村じゅうではパニックになってるでしょうね」
少し意地悪そうな側面をのぞかせるのは、年相応なのかもしれない。
「ははっ、そうだろうね」
それから……
メッセージアプリを使いたいけれど周りに打ち解けられる同世代がいない、といった、女の子らしくてかわいい悩みまで。
「じゃあさ、あとで僕が招待するよ」
「えっ!? そ、そんなのいいです、いいですって」
――この村に来て、知りたいことが増えた。
連綿と語り継がれてきたのであろう、この村に残るかつての国の姿。
そして、その村でさみしさを隠しながらお役目を全うしてきた少女。
僕だけが知っている彼女のほんとうを、もっと、もっと見たい。
これらはけしてほかの人に共有させたりしたくない――
というのが僕の偽らざる本心なのだった。
原初の太陽が灯るとき 消された古代史 コミナトケイ @Kei_Kominato
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