映画を観たくて行動するのではない。ひとは体験や思い出を求めて動くのだ。

 初めに断っておくけれど、ぼくは映画が好きだ。
 だけど、最後に映画を観に行ったのはいつだろうと思い返してみると、もう10年以上映画館に行ってなくて、ちょっと愕然とした。

 同様に、レンタルビデオ店も最近利用した記憶が無い。
 というか、レンタルビデオ店自体少なくなっている気がする。気のせいではなく、本当に減っているのだろう。

 そう言えば本屋も減っていると聞く。地方だと発売日に置いてないなんて普通だし、取り寄せてもらうくらいだったら『amazonで注文したほうが早いよね』となってしまう。まあこれは日本の出版業界の怠慢といえるかもしれないけれど……。

 とにかく、映画館自体はわりと近くにまだあると言えばあるのだけど、インターネットが使える環境があればわざわざ遠くまで足を運ばなくても家で視聴できちゃうしな~なんて思ってしまう。いまだとレンタルビデオ店に行く時間さえ面倒に感じてしまうくらいだ。

 映画をはじめ、多くのコンテンツは値崩れを起こす一方である。
 そして、この流れはもうたぶん誰にも止められないだろう。


 ……本当だろうか?


 産業全体が低迷することは免れないだろうけれど、そのなかでも生き残る方向性はある。

 たとえば、レコード自体はCDなんかに取って代わられてしまったけれど、それでも完全に絶滅したわけじゃない。愛好家がいる限りは必ず残る。

 これは書籍についても同じことが言えるだろう。

 単館系の映画館のように、本当に映画が好きで、映画のためならちゃんとお金を支払える少数のひとたちをちゃんとおもてなしできる環境を作っているところは強かったりする。


 さて、本作に登場する人物は、牧歌的というか、良い人が多い。
 一方で、今ではとてもできなさそうな行動も起こす。
 エキセントリックで奇想天外ハプニングも起きるけれど、それらも含めて関わった人たちの記憶には良い思い出としていつまでも残ることだろう。

 今のこのせわしない時代にこそ、この作品の登場人物たちが求められているのかもしれない。

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