第17話 エピローグ

「あれで良かったのか?ヘリオン」


「ええ。面白いデータが取れたわ」


「いくら地球の人口が増加しているとはいえ、受肉した存在を無駄に死なせるわけにはいかない……か。合理的なのか非合理的なのか」


「もう1人の自分と対峙させて、己の心と折り合いをつけ、現実世界に戻す……か。それは確かに画期的な方法かもなぁ」


「しかし、彼が勝利したからいいものの、オルターエゴの方が勝利してたらどうなってたんだ?本来あるべき魂が上書きされていたかもしないんだぜ?」


「いいのよ。彼は元々死にたがっていた。もう1人の自分にやられてしまったというならそれまでのことよ。この案件の担当はこの私なのだから、口出ししないで頂戴」


「へーへー。さすが堕天使から昇格した見習い天使様、考えることが違う」


「あなたも元堕天使でしょうが!」


「おおっと危ない。見習い天使同士……同僚同士のいざこざはご法度だぜ。」


「あんたがアタシの気に触ることを言うからでしょうが!自粛しなさい」


「その高飛車な性格の方を修正する方がどうかと思うがね……」


「で。彼は記憶は消えるのか?」


「いえ、覚えていると思うわ。何もかも忘れさせてしまっては辺獄での経験が全く生きなくなってしまうからね。彼には前向きに生きてもらう必要があるわ」


「元々、天国でも地獄行きでもない人間を一時的に置いておく辺獄をこのように活用するなんて、よく考えるよなぁ……しかも生きている人間を、そいつの心象世界にそれぞれ置き換えて閉じ込めるなんて。このプロジェクトを立案した奴はイカれてるぜ」


「あら、自分の上司を侮辱する気?」


「別に。言ってみたかっただけさ。俺ら下っ端は粛々とつつがなく任務をこなすだけさ。お前があの人間にやったと同じように、な」


「……そうね。このプロジェクト、成功させてみせるんだから」

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辺獄の空中庭園 くりふぉと @qliphoth109

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