第4話 おとこのこ

私は、男性が苦手だ。

物心がついたときには、私のそばに父親という存在はなかった。つまり、大人の男性と接する機会自体がなかったのだ。はじめて近くに存在した中学一年の時の教師は、私の身体を無理やり奪った。それ以来、「男」が怖くなってしまった。

でも、ここは病院。当然男の看護師や医師がいる。私は、男性恐怖を治すきっかけにもなるのではないかと考えていた。

とりあえず、話しかけてきた男の子と会話する。

話が合わなさそうならそっと距離を置く。

一通り繰り返して、私はイヤホンをつけて音楽を聴いていた、ある男の子に声をかけた。

「ねえ、何聴いてるの?」

彼は驚いた顔をし、体をこちらに向けた。視線は合わなかった。

「え……!えっと、アニメの主題歌なんだ」

「あ!これ私も観てたよ!この曲、すごくかっこいいよね」

彼の小さな体がピクリと動いた。

「え……。し、知ってるの?」

「知ってるどころか一話から十一話までリアタイで観たけど」

「……!!」

彼は嬉しそうな表情をした。私は握手を促すと、そっと彼も手を差し出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

泡沫の夢 26 @Fu__te__ne_26

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ