主人公と彼女の、人間そのものに対するSFドラマ

タイトルに引かれてページを読み進めた途端、ぐいぐいと二人の心理描写に引き込まれてしまいました。
来栖の、愛らしいけれど妬ましいという相反した感情にはとても共感が持てて、彼の人間らしさが切々と伝わってくる内心、それを描く文章力にまず引かれます。
人犬となった幸奈の細かな所作、まだ人間として意識を持っている強さといった部分も胸に痛く刺さり、二人の今後がとても気になります。

また人間が人犬に加工されるという設定、それを反映する社会性など彼等を取り巻く環境が、いかにもありそうなリアリティをもって迫り、彼等の心理へと更にのめり込むキッカケを与えてくれます。読み物としてまさに一流の作品だと思いますので、切ない二人の心を読み進めたい方にはぜひともお勧めしたい作品です。

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