Invisible friend
今回は、もふもふしないお話である。
ブラバは待って欲しい。
どういうことか、ご説明しよう。
私の住まいが田舎にあることは既に書いた通りであるが、分かりやすい例としては、自宅から最寄りのコンビニまでの距離が挙げられる。
具体的に数字を出すと「そんなんで田舎ぶってるんじゃあないよ」と怒られそうなので控えるが、少なくとも私にとって車を使う距離なのは確かだ。
だが、偶に(月に一度……いや、四半期に一度?)日頃の運動不足に危機感を覚えた私が散歩がてらにコンビニまで歩いていくことがあるのだが、右を向けば古民家、左を向けば畑という道をてくてくと歩いていくと、時折風に乗って何とも言えない臭いが漂ってくる時がある。
そして、しばらくすると聞こえてくるのだ。
ぶもぉぉぉぉ
そう、ウシである。
私の住まいの近くに、ウシを飼っている家があるらしいのだ。
らしい、というのは、実際に見える範囲にはウシは勿論牛舎らしき建物も見当たらないからなのである。
別に牧場をやっている、とかそういうことではないのだろうが、詳細は分からない。(ちなみに、我が家の隣家ではニワトリを飼っている。偶に取れたて卵を分けてくれる)
ただ、姿は見えなくともその存在だけはきっちりと主張されてくるのである。
ぶもぉぉ、って、あなた。
ウシしかいないでしょ。
ということで、今回は声だけ聞こえる動物の話だ。
例えば、私がこの住まいに越してきたばかりの時の話である。
休日に家でリラックスしていたある時、こんな声が聞こえてきたのだ。
げええええ!!!
私は思わず身を竦ませた。
「な、なに……?」
恐る恐る窓を開けて声のした方角を見るが、まあ何も見えない。森と畑しか見えない。
しかし、今の声は、一体……?
後日近隣の住人に聞いた所、「ああ、ありゃキジだよ」という答えが返ってきた。
キジ……!?
キジって、あの、犬猿雉のキジ?
私がその時感じた驚きは、キジってこんな身近にいるんだ、というものと、キジってあんな声で鳴くんだ、の二つであった。
よく、「けぇぇん」という声で表されることが多いと思うのだが、どうだろう、みなさん、キジの鳴き声って、聞いた事、あります?
私の家の近くのキジの鳴き声は、「げえええ!!!」である。
雉も鳴かずば撃たれまいとは言うけれど、そりゃ撃たれるよ、あんな声で鳴いてたら……。
しかし、やはり私はこのキジという鳥の姿は見たことがないのだ。
隠れるところが多いとはいえ、あんなに派手な声で鳴いておいて、不思議と言えば不思議である。
まあ、探そうとも思わないが。
こういう田舎にいると、いるんだろうけど姿は見えない動物というのは意外に多い。
夏場に畑を襲うのはハクビシンだとか言うけれど、やはり私はそれを見たことはない。
チッチッチと鳥の鳴き声がしてもどこで鳴いているのだか分からない。
モグラ穴を見たことはあるけれどモグラを見たことはないし、壁の向こうからゲッコゲッコと声が聞こえても窓を開けるとカエルの姿は見えない。
木陰から、ガサっという音が聞こえても、私が目を向けた頃には何もいない。
今の時代、人間と野生の動物というのは生きている世界が違うのだろう。
私のようなインドア派にして鈍くさい人間にとっては、特に。
同じ空間にいても、ほんの少し層がずれてる、と言うべきだろうか。
見えないけれど、同じ場所で生きている。
そんな隣人たちに思いを寄せて、偶には彼らの声に耳を傾けながら休日を過ごすというのも悪くはなかろう。
ゲッコゲッコ。
チッチッチッチ。
コケッコッコッコッコ。
ジリリリリリリ。
ぶもぉぉぉぉ。
げええええ!!!
……うん。普通に騒音ですな。
みゃあ。
君はウチのネコでしょ。
あ、エサの時間ね。はいはい。
もふ日記 lager @lager
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