ぼくたちは屋根裏部屋が好きすぎる

子供の頃のぼくは屋根裏部屋に住みたかったし、もっと言えばツリーハウスが欲しかった。
けれどもうちには屋根裏に続く階段はなかったし、ツリーハウスを作れるような大きな木もなかった。
だから仕方なしに近所の神社の敷地内に秘密基地を作ったのだが、中で火を焚いたところ、ボヤ騒ぎになってめっちゃクソ怒られた。
ダンボールで出来た基地はよく燃えた。

なんでぼくが幼少期のアホエピソードをこんな形で披露したのかというと、この作品の主人公であるところの「私」と、幼少期のぼくが求めていたものは同じようなものなのでは無いかと思ったからだ。

結局のところぼくが屋根裏部屋やツリーハウスや秘密基地に求めていたものといえば、「誰にも怒られずにお菓子が食べたい」とか「夜更かしがしたい」といった小さな逃避だった。

透明感のある文体で丁寧に描かれたこの物語は、逃避の物語だ。
作品の中で、「私」はずっと逃げ続けている。
(もしかしたら、関西への進学についてもその一環なのかもしれない)

逃げながら終わりのない自己嫌悪に陥る「私」は、けれど作品中の誰よりも優しい。

逃げ込んだ先で「私」が目にするものが何か想像はつきないが、それはきっとひとときの安息を彼女に与え、前に進む力を与えてくれるものだろうと思う。

屋根裏部屋はそういうものであるべきだからだ。

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