いろはと一緒にごーめにぷれいす!

♢第1話 「おひる」♢


「…ねぇ、涼くん。お昼、何食べる?」

「うーん…、もうすぐだし、着いてから探すのはどう?それで、ピンときたところで食べる」

「行き当たりばったり旅の定番、ってやつだね。やってみたい!」

「よし、決まりだな」


カタッ、ガタゴトッ。

仲睦まじく会話をする若き男女を乗せた列車が、ピィーーッ!と元気な声を上げながら走っている。


僕はイケメンではないし運動音痴だし、勉強もそこそこだし背は163と平均以下。正直胸を張って誇れる事がない男だ。

しかし、今隣にいる彼女、白鳥いろはは、僕とは釣り合わない女の子だ。

僕の家の近所に住む、実業家の一人娘であり、僕の幼馴染でもある。


容姿は、『立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花』なんて言葉がしっくりくる。

髪型は結構コロコロ変わるのだが、今は煌びやかな、鎖骨の辺りまで伸びた銀髪ロング。因みにこれは染めではなく、地毛である。僕は好きなのだが、どうも世間一般とやらは見方が違うらしい。まあ、今はどうでも良い話だ。


身長は157、スリーサイズは聞いた事がないが、見た目そこまで大きくない。そのスラっとした体躯は、まるで精巧に出来た人形の様である。


性格は根は真面目なのだが、僕といるとリミッターが外れるのか、本人は無自覚かもしれないが、好奇心剥き出し、元気で見た目とは裏腹に活発的である。

反対に、知人や知らない人に対しては、落ち着きのある、しっかりとした一人の「女性」の様な立ち振る舞いを見せる。


そういった所も含めて、色々な面で、僕はいろはに頭が上がらない。


「次は、京ノ都〈きょうのみや〉、京ノ都〈きょうのみや〉です、お出口は左側です…」

「あっ、もう着くみたい」

「降りる準備…、はもう大丈夫だね」

鞄を抱えながら、窓の外を眺めているいろはを見て、僕は安堵する。


僕達は、年齢的には今高校生。ピッチピチの15歳。しかし、とある事情から二人とも学校に通っていない。

その為、こうしてなんの行事もない辺鄙な日に、旅をすることが出来ている。


成り行きや、どうしようもない様々な出来事の末に辿り着いた、最果ての地。そんな今の時間に、ささやかながら心の中で感謝して、僕らは列車の停車をドアの近くに移動し、待つ。


キーッ、キキーィッ。


車窓を眺め、ゆったりと待つと、列車はホームに停止した。

「さあいこっ!」

「混んでるから気を付けて、いろは」

「んー、それじゃ、はぐれないようにしっかり握ってれば安心だね!」

そう言って、いろはが僕の手を彼女なりにガッチリと掴んできた。

僕は、反射的にその手をぎゅっと優しく握り返す。

すると彼女はこちらに向かって微笑んで、そして人混みを上手く掻き分けるようにスタスタと歩いていく。

いつもは横か後ろな彼女が、今日は気分が高揚しているのだろうか、率先して前を歩いていた。


僕は、なにが原因なのか分からないけど、不思議と鼓動が高鳴るのを感じていた。



「…凄く勇み足な所首を突っ込むようで申し訳ないんだけど、その、……迷うなよ?」

「え?…んもぅ、失礼だなぁそれはっ。わたしに限ってそんなことはないよー。」

若干膨れっ面でこちらを見るも、歩く速度は変わらず進んで行く。

「……そう言ったそばから出口とは真逆の方向に向かっているのですが…、いろはさん…」

「…え?あっ、えっ!?いやっ、その、わたしがトイレにい、行きたかったから、こっちにきたんだよ!?だから決して迷ってるわけじゃ」

「…そっちにトイレないぞ?」


そう僕がツッこむと、彼女はその場で硬直した。

「…えっ」


…ほうらやっぱり音痴だ。


なんて、僕は言ってはないけど顔には出てたらしい。膨れっ面になったいろはにビシッと指を刺される(物理)。

「…涼くん、今すっごく失礼なこと考えてたでしょ」

そう言ういろはに、僕はジト目を向けられた。

なので、

「…そういういろは、可愛いと思う」

とはぐらかした。

すると、若干モジモジして何かを小声で呟いた後、はっと何かに気付き、僕に怒った。

「…今無茶苦茶誤魔化した」


逃れられなかった。



この後滅茶苦茶つつかれた。

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