てーまぱーく編
てーまぱーく [1]
ヒューーーーゴォォォ……。
「「「キャァァァァァァァァァ!!」」」
甲高く、脳にキンキンくる絶叫を発する人達を載せた箱型の車両が、目の前を高速で通り過ぎていく。
周りには、例えば主に忌々しいカップルなんかをのせ、遥か高みからの景色を楽しむ物や、僕にはその楽しさが理解できないが、上下運動をするプラスティック製の馬に乗って、おんなじ所をぐるぐる回されるだけのとか。
そういうアトラクションが集まった場所に、僕らは来ていた。
「……ゆーえんちだぁっ!」
僕の隣では、いろはが眩しくて凝視できないほど目をキラキラさせていた。
その笑顔を見ていると、なんだかリア充共を恨めしく思う気持ちも、いつのまにか霧散していた。
そういえやかななば、いろはは如何にも期待値MAXといった感じだけど……。
「……なあいろは、もしかしてお前遊園地来たこと無いのか?」
「えっ?……あーうん、まあね〜」
ほーん成る程始めてか。……まあ俺もだけど。
ていうか、女の子と二人でテーマパークって、今更ながらデートっぽいなぁ……。
……とはいえ、僕といろはは幼馴染だし、いろはも僕に対して、そんな感情持ってないだろう。変な期待なんてしない方が良いのだ。
「それよりそれより!何乗る?えーっと……」
いろははポケットから地図を取り出して、うーんと唸った。
「このウォーターシューティングとか面白そう!……あっ、でもアリスインワンダーランドも良いなぁ……。それともこのウルトラミラクルコースター!?」
いろはがチョイスしたのは、シューティングゲーム、ホラーハウス、ジェットコースター。全部ジャンルバラバラじゃねーか。
「あーー!!迷うぅー!」
「……全部乗ろうぜ」
「…正気かね!?……それは生きて帰って来られるか分からない、とんでもなく危険な賭けだということを承知の上でか?」
僕は、神妙な顔をするいろはの肩に手を乗せて、カッコよく……
「I’ll be back.(俺は戻ってくるさ)」
よし決まったァァ!
と、僕が内心ガッツしていると、いろはが不意に微笑んだ。
「I’m waiting for you,…by the time you come back.(私は待っているわ。…あなたが帰ってくるまで)」
「……っ」
……声が出なかった。
そこに居たのは、遊園地に来てはしゃぐ女の子じゃない。俺とのコントに乗ってくれる、気さくな女の子でもない。僕なんかには豚に真珠な、白百合のような可憐な超絶美少女がそこにいた。
「……どうしたの?いきなり呆けちゃって。あー、もしかしてバカにしてる?私、これでも英語はそこそこ出来るんだぞ〜!?」
ぷんぷん、と彼女が拗ねる。その動作、声、どれもこれも可愛すぎた。
(いけない、雑念は振り払わないと)
僕は軽く深呼吸して、いろはの手を掴んだ。
「……ごめんごめん。それじゃ、まず最初はウォーターシューティングから行こうよ!」
「うん!」
そして僕らは走り出した。
まだ見ぬ新たな世界に向けてっ!
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