第12話
幸いにも噂のせいで夜中に外に出る人間は居ないのか町は人っ子一人居なかった。
誰もいない町中を気絶した源治、それを米俵のように担ぐ菫、その後を鞄を持った凛がついてくる。
「ねえ、それ重くないの?」
「まあ重いと言えば重いGA歩けなくなるほどじゃなイ」
「菫さんはあの船の正体はなんだと思う?」
「そうだナ、まだ沈んだ姿を見ただけだかRA何とも言えないガ怪異とは違う何かを感じたNAもしかしたら本当にそこの臆病者が恐れている幽霊かもしれないナ」
「誰が1ピース250円だって?」
「起きたのKA、ならばこうして運ぶ必要もないナ」
そう言うと菫はその場に源治を放り捨てる。放り捨てられた源治は打ったのか尻をさすりながら起きると半ば諦めているのか一緒に歩き始める。
「いいの?幽霊でちゃうよ?泣いちゃわない?」
「ご心配どーも・・・あとで覚えてろよペチャパイ」
煽る凛とそれを憎らしげに見る源治、どこ吹く風な菫の三人は湖に着くと昼間とは違い、湖の中央に巨大な海賊船が鎮座していた。
「でかいな・・・やっぱあたいおうちかえる!!」
「今更それは通らないよ。ほら、とっとと歩く!」
再びオネエと化した源治の尻に凛が蹴りを入れ前に進ませボートを探すが、生憎普通のボートは全てボート小屋の中に引き上げてしまったのか、アヒルさんボートしか残っていない状態であった。
これしかないのであれば仕方ないと源治を動力源にして三人は海賊船を目指す。
「ほら、クソ髭!その髭毟られたくなきゃもっと力を入れて漕ぐ!」
「ヨロコンデー!」
「君らはあれだNA、見ていて面白いナ。凛君は先程よりも表情が生き生きしているZO」
幽霊船を前に弱気になった源治を後部座席で凛が激励しボートを進ませる。海賊船の下に到着した一行は錨の鎖を源治を先頭によじ登り船内に侵入する。
船内はもぬけの殻であり人がいる気配はなかった。凛と菫で船内の探索を行っていたが、突然甲板に待機していた源治の絹を裂くような悲鳴が聞こえた。船室を調べていた凛と菫が甲板に向かうと、そこには源治を取り囲むように腕がなかったり頭がなかったりと明らかに人間ではない海賊たちが怯える源治を取り囲んでいた。
「見ろ!獲物がノコノコ3匹も現れたぞ」
集団の先頭に居た身なりから船長であることが伺える男が合図すれば甲板に出てきた凛と菫を他の海賊たちが取り囲む
「やめて!乱暴する気でしょう!エロ同人みたいに!」
「何であんたがそんなこと言ってるのよ!言うならどっちかと言えば私達でしょ!」
「マズイNA、武器は源治しか持っていないゾ」
そうこうしている間に源治が持っている斬無を船長に取られてしまう。
「ふむ・・・業物だなこれは・・・ところでお前達、夜遅くに人ん家にズケズケと踏み込んできてなんの用だ?」
「えー、私たちはですねー、あなた方がー、近隣住民の方々にー、迷惑をかけているとのことでー、それを調査しに来た次第でしてー」
「そうか調査か・・・ならもうその必要はないぞ」
「うへへ・・・お分かりいただけたでしょうか・・・では私達はこれにて失礼致しますのでつきましては取り上げたものを返していただければ・・・」
「ああ、そういう意味じゃないんだ、お前たちはここでタコの餌になるということだ」
揉み手でごまをする源治に対して船長が一声かければたちまち周りに居た船員たちが三人に武器を向ける
「これは・・・やばいね」
「HMM、武器もなく四方は敵、絶体絶命というやつだNA」
「呑気に言ってる場合じゃないでしょどうするのこれ・・・あのヘタレは?」
「あいつなRA武器を向けられる前に飛び降りて逃げたZO」
「あんのクソ髭!」
「餌が減ったか・・・まあ良い、クラーケンを呼び出せ!」
海賊たちが甲板の端に二人を追い詰めると他の船員が船の後部に備え付けられたドラを鳴らす。すると湖が大きく振動し一拍置けば湖から巨大なタコの足が出てくる。
「紹介しよう、俺のペットのクラーケンだ。ここ最近肉が食えなくて気が立ってる。まあせいぜい足掻いて見せてくれ。久しぶりの見世物だ」
船員と船長は船の前方と後方に別れて集まっており凛と菫は中央の甲板に取り残された形になる。
船長は二振りのサーベルとフリントロック式のピストルを一丁投げてよこす。
「前回の奴らは5分も持たなかったが、お前さん達は腕に覚えがありそうだ。ああそうだ、怖いのならそこのピストルで自殺しても構わんぞ。もっとも、弾は一発しか無いから一人しかこの恐怖から逃れられないがな」
悪趣味な笑いをあげる船長を船長を拾ったピストルで撃つ凛だが、運悪く弾は船長を大きく逸れ誰に当たることもないまま湖に落ちていく。
「HMM、これはしばらく耐えるしか無いNA」
「耐えるって何を!?まさかあいつが戻ってくるっていうの!?」
「AA、あいつは怖いだの面倒くさいだのゴネる男だGA・・・仲間を見捨てたことは一度もなイ。とくに、静葉の妹である君なら尚更DA」
「あっそ!、なら期待しないで待つよ!」
こうして凛と菫の終わりの見えない戦いが始まった。
SLASH/SHOT~Frame Warrior&Ice Valkyrie 雑賀ランボー @saika_ranbow555
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。SLASH/SHOT~Frame Warrior&Ice Valkyrieの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます